歪んだ月が愛しくて2
初めて白樺に会った時の感覚は間違っていなかった。
俺は自分の想いに真っ直ぐな白樺のことが羨ましくて、悔しかった。
俺が貫けなかった兄ちゃんへの想いを真っ直ぐに貫こうとする、白樺のことが。
だから白樺の行動を責める気にはなれなくて、その想いを否定したくなくて退学にもさせなかった。
会長辺りはお人好しって言うかもしれないけど、白樺を退学にして欲しくなかったのは全部自分のためであって白樺のためなんかじゃない。
白樺の想いを否定したら幼い頃の自分を否定するのと一緒だったから…。
でも白樺は俺の想像よりも遥かに強い奴だった。
頑固で、図太くて、とても勇気のある無鉄砲な奴だからこそ手を伸ばしてでも助けたかったのかもしれない。
「僕からしたら君の方が何十倍も強いよ。自分から人質交換申し込んだり、僕を逃すために態とアイツ等を挑発したりするなんて僕には絶対出来ないもん」
「そう?普通じゃね?」
「どっこも普通じゃないから!それを普通って思ってたら命いくつあっても足りないからね!」
「はいはい。まあ、それはどうでもいいとして」
「どうでも良くないだろう!一番重要なことじゃないか!」
「突然ですが、ここで白樺くんへの罰ゲームを発表しまーす、パチパチパチ」
「え…、ば、罰ゲーム?てか、何で今更敬語?人の話聞いてた?」
「聞いてた聞いてた。その上でちゃんと決めたから」
「わ、分かった…。それなら一思いに言ってくれ。覚悟は出来てるから」
ギュッと、白樺が固く目を瞑る。
「じゃあ歯食いしばってよく聞け」
「、」
声色をワントーン下げると、白樺は目を瞑ったまま言われた通り口元を固く結んだ。
「今後一切覇王親衛隊に関わるな」
「………」
「そして俺にしたことも含めて今まで自分がやって来たことを忘れるな。お前がこれまでにして来たことははっきり言って最低だ」
「、」
「だから、その全員に詫び入れて来い。それがお前に与える罰だ」
「……え?」
漸く口元を緩めた白樺は驚いたように目を丸くして俺を見つめた。
「何?不服?」
「いや、そうじゃなくて…」
「もう親衛隊じゃないんだからそのくらい出来るよな。あ、学園を辞めた奴にも連絡取ってちゃんと謝りに行けよ」
「だからそうじゃなくてっ、僕の罪は君を危険な目に合わせたことだろう!それじゃあ君に償ったことにはならないじゃないか!」
「償い?別にそんなの求めてねぇよ」
「も、求めてないって…、でも僕に罰を与えなきゃ君だって…」
「俺、お前のこと結構好きなんだよ」
「………へ?」
「だから、お前のこと好きだって言ったの」
「なっ!?」
「勿論、恋愛感情とかじゃないから安心しろよ。それにお前は俺のこと好きじゃないだろうけど、俺はお前とこうやって話しするの好きだから。だからどっちかって言うと“これからも俺の愚痴を聞く”って言うのが罰。でも流石に卑怯者はお断りだからちゃんと謝ってから出直して来いってこと」
「それは、僕がやってしまったことだから当然だけど…。そんなのが罰でいいのか?いや、そもそも僕だって君と話すのは好きだから全然罰じゃないんだけど」
「あ、そうなの?じゃあ俺達相思相愛じゃん」
「っ、きゅ、急に笑わないでくれる!?心臓に悪いんだよ!!」
「お前心臓悪かったの?大丈夫か?」
「あ、あのね…」
大袈裟に溜息を吐いてベンチに項垂れる、白樺。
何故か呆れられた顔をされたが意味が分からない。