歪んだ月が愛しくて2
未空Side
「何か手伝うことある?」
そう言ってキッチンで作業する頼稀に話し掛けた。
「いいって言っただろう。向こうで菓子でも食ってろよ」
「そんな邪険にしなくてもいいじゃん」
「だったらこっちに逃げてくんじゃねぇよ」
「あ、バレた?」
「声がでけぇんだよ」
みっちゃんに怒られたの聞こえてたのか。
まあ、あれだけ騒いでたら嫌でも聞こえるか。
「それとも俺に用があるのか?」
頼稀は俺と目を合わせることなく淡々と作業に集中していた。
「頼稀に隠し事は出来ないな…」
でもちゃんと俺の話を聞こうとしてくれてるのが分かる。
そして俺が話を切り出すのを待ってくれていると言うことも。
「どうせ俺が聞きたいことも分かってるんでしょう?」
「……アイツの、何が知りたいんだ?」
やっぱり頼稀には何でもお見通しか。
俺ってそんなに分かり易いのかな。
「最初に言って置くが俺にも話せることと話せないことがあるぞ」
「分かってるよ。でも頼機が話せることだけでもいいから教えて欲しいんだ」
「………」
頼稀はリカのことをよく知っている。まるで自分のことのように。
何よりもリカのことを最優先に考えていて大切にしているのが分かるから悔しいけど今は頼稀に頼るしかなかった。
「で、お前は立夏の何が知りたいんだ?」
「……リカは、大丈夫なの?」
「さっきの魘されてたあれか?」
「うん。あんなリカ初めてだったから…」
「大丈夫か大丈夫じゃないの二択だったら大丈夫だ。別に生死に関わるような病気じゃない」
その言葉にホッと胸を撫で下ろす。良かった…。
「まあ、病気には変わりねぇがな」
「病気?」
「精神的なもんだ。あればかりは俺にもどうしようも出来ない。ただ手を拱いて見ているだけしか出来ないなんて…、本当情けねぇよ」
頼稀の舌打ちが聞こえる。
唇を噛み締めて微かに手元も震えていた。
それだけで頼稀のリカへの想いが手に取るように分かる。
「それは治らないの?」
「……どうだろうな」
グッと、歯切れの悪い返答に眉を顰める。
「アイツの病気はアイツ自身の心の闇そのものだ。誰にも触れられない心の奥底に閉じ込めて他人の介入を拒んでいる。自分だけではどうしようも出来ないくせに誰にも頼ろうとせずに独りで背負い込んでやがんだよ」
「……リカの病気はその心の闇が原因ってこと?」
「そうだ」
「何で…、今までそんなことなかったのに…」
「上手く隠してたからな」
「、」
その言葉が胸に深く突き刺さった。
『……そんなことないよ。ただ頼る必要がなかっただけ』
あの時と一緒だ。
まるで「こっちに入って来るな」と言われているようで途端に怖くなった。
「俺、信用されてないのかな…」