歪んだ月が愛しくて2



リカの境界線を破りたかった。

その瞳に俺だけを映して欲しかった。

それだけなのにヨージに見透かされてリカが頼ってくれないなら自分から頼ってやろうと意気込んだくせに結局は頼稀に頼ってこの様だ。



「結構キツイな…」



……分かっていたはずなのに。



リカのことを想う頼稀を見て改めて痛感した。
俺には何も出来ない。無力で臆病な俺にはこれ以上リカの心に踏み込むことは許されないのかな。



「なら、止めるか?」



その問いに思わず顔を上げた。



「や、めるって…」

「今からでも遅くない。キツイなら立夏から手を引け」

「、」



思わず言葉に詰まった。
まるで何もかも見透かされているような感覚に少しだけ身構えた。



「元々他人の闇に触れようなんて無理な話なんだよ。それに首突っ込むってことはその人間の闇を一緒に背負うことと同じだからな。お前にその覚悟はあるのか?未だに過去に囚われているお前に立夏の闇を一緒に背負ってやることが出来んのかよ?」

「それは…」

「即答出来ないなら止めておけ。俺もお前にそこまで背負わせるつもりはない」

「………」



優しいようで残酷な言葉。

でもそれは憎しみからの言葉じゃない。



だからこそ俺は頼稀の言葉に頷けなかった。



「少し言い過ぎたか?」

「……そんなことないよ。頼稀が言ったことは正しい」



俺が自分の過去から逃げ続けているのは本当のことだから。



「……いや、俺の方こそお前に八つ当たりした」

「八つ当たり?」

「お前の目にどう映ってるか知らねぇが俺にとって立夏は大切な奴なんだ」

「うん…。分かってる」

「本当か?言って置くが恋愛感情とかじゃねぇからな」

「え、そうなの?」

「当たり前だ。俺はホモじゃない」

「ほ、本当に?本当にリカのこと好きじゃないの?」

「しつこい。違うって言ってんだろうが」

「だって俺、頼稀はずっとリカのことが好きだと思ってたから…」

「好きは好きだ。でもそこにあるのは恋愛感情じゃない。強いて言えば家族愛みたいなもんだ」

「家族?」

「……兎に角変な勘違いすんな。他の連中にも伝えておけよ」

「他って?」

「神代会長しかいねぇだろう」



あ、やっぱり。


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