歪んだ月が愛しくて2
陽嗣Side
Prrrr…
生徒会室を出た後、俺はあるところに電話を掛けた。
『珍しいな、お前から掛けて来るなんてよ』
「あー…悪いんだけど、ちょっと俺の遊びに付き合ってくれない――― ちゃん」
通話相手の存在を知るのは覇王の中でも俺と尊と九澄だけ。
未空に話していないのは特に理由はないが、強いて言うなら俺と尊は初等部の頃からの付き合いだから学年の違う未空に話すタイミングがなく、ここまで来たらもう話さなくて良くねぇみたいな雰囲気になってるからだ。決して「黙ってた方が面白いから」ではない。
当然、りっちゃんも知らない。
だからりっちゃんの本性を探るにはもってこいの人物だった。
中庭に出てりっちゃんと白樺の姿を確認すると、俺は2人に気付かれないように木の影に隠れてこっそり様子を伺うことにした。
「じゃあ僕がセフレだったことは?」
「……聞いたことはある」
白樺真冬は当時非公認だった覇王親衛隊の幹部で、俺のセフレだった。
俺が親衛隊のメンバーに手を出すようになったのは中2の頃。
大した理由はない。ただ外に出るのが面倒な時に手近の男で済ませていただけ。
男と女どちらがいいかと問われれば当然女の方がいいに決まっている。女はどこもかしこも柔らけぇし、勝手に濡れてくれるから楽でいい。
ただ男の場合はそうはいかない。ヤる前には何かと準備が必要だし、本来突っ込む場所じゃないから自然と濡れることはないし、前戯も念入りにやらないといけない。俺は殆どやったことないけど。
それでもこんな閉鎖的な空間に閉じ込められてたら嫌でもストレスが溜まるし、何かで発散したいと思った時に手近の男で我慢するしかなかったのだ。
ただ一つ同じなのは、相手が女であっても男であってもただの遊びってこと。本気じゃない。ましてや同性の男に本気になれるはずがない、とあの時の俺はそう信じて疑わなかった。
白樺はそんなセフレの中で結構な頻度で遊んでいた奴だった。
白樺を贔屓にしていたのは、親衛隊の中で特に俺の周りをうろうろしていたのが白樺だっただけのこと。
白樺が俺に抱く感情には気付いていたが、本人はあれでも隠していたようだったから特にリアクションを取ることなく、白樺が何も言って来ないのをいいことに利用させてもらっていた。
「でも、その考え自体が間違ってた。どんなに近くで言葉を交わしても、何度身体を重ねても陽嗣様の中に僕の存在はなかった。それどころか名前すら覚えてもらえなくて…っ。滑稽だろう。自分でも惨めだってことは分かってた…。でも、それでもあの方の近くにいたかったんだ。今は無理でもいつかきっと僕のことを選んでくれると本気でそう思ってたから…、君が現れるまではね」
俺が特定の人間を選ぶはずがない。
だって、俺は選ばれたい側の人間なんだから。
そう言う意味では俺も白樺と同じだった。
だから無意識の内に白樺を指名していたのかもしれない。
それに対してアイツはいい顔をしなかった。
セフレを囲っていたことじゃなく、白樺を指名していたことが気に食わなかったらしい。
そんな相手の反応を見たいためだけに、白樺も、りっちゃんも利用していた。