歪んだ月が愛しくて2
「あー…立夏はいるが、事と次第によっては合わせるわけにはいかねぇな」
「番犬もいることだしな」と言って未空と頼稀に視線を送ると、それに気付いた膝カックンくん達が一直線にこちらに向かって歩いて来た。
「藤岡さん!」
未空と頼稀の目の前で膝カックンくんが俺の名前を呼ぶと、次の瞬間、膝カックンくんを含むGDのメンバーが一斉に土下座した。
そして、
「藤岡さん!俺達を弟子にして下さい!」
………は?
俺も、俺の後ろに控える葵達5人も、この状況を全く理解することが出来なかった。
そんな最中、目の前で土下座する彼等は顔だけを上げて未空と頼稀の後ろにいる俺に向かって声を張り上げた。
「先程のことは本当に申し訳ございませんでした!二度とあのようなバカな真似は致しません!」
「俺達、藤岡さんの男気に惚れたッス!」
「藤岡さんは男の中の男です!いや、漢です!」
「俺、藤岡さんような男に生まれ変わりたいんッス!」
「俺達のこと一から鍛え直してもらえないでしょうか!」
「俺も藤岡さんのような人間になりたいんです!本物のGDでいたいんです!」
「貴方に一生付いて行きます!」
「お願いします!」と一斉に頭を下げる、GDのメンバー。
それに引き気味の俺が未空と頼稀の背中に隠れてこっそり教室を出ようとした時、ガシッと二つの手に肩を掴まれ逃亡を阻止された。
勿論、その二つの手とは…。
「リーカ♡どこに行くのかなー?」
「どう言うことか説明しろ」
いや、怖いって。
何でこう言う時だけ息ピッタリなの。
「何だ、コイツ等お前の知り合いか?」
紀田先生の何気ない一言のせいで未空と頼稀の目付きが更に厳しさを増す。
「いや、さっき偶々そこで会って…」
「そこってどこだ?いつコイツ等と会った?」
「まさかヨージが言ってた面倒なのってこれのこと?何で隠してたの?」
「か、隠してたつもりはないんだけど、言うタイミングがなくて…」
「タイミングはいくらでもあったよね?それなのに言わなかったってことは故意に隠してたってことだよね?これは尊と九ちゃんにも報告しなきゃダメな奴かな〜?」
「お前が勝手なことをするようならアゲハさんに報告して監視を増やしてやってもいいんだぞ」
「やめて!それだけはご勘弁を!」
「じゃあ洗いざらい吐いてくれるよね?」
「これ以上自由を奪われたくなかったらな」
会長と九澄先輩にチクられるなんて嫌だ。嫌過ぎる。
スマホのGPSならまだしも、俺の持ち物に発信機付けられたり部屋に盗聴器仕掛けられるのだけは何としても避けたい。
アゲハも頼稀ほどとは言わないが結構過保護な部類に入るし、これ以上護衛なんて増やされたら本当に自由がなくなってしまう。
「藤岡さんは何も悪くねぇんだ!」
「藤岡さんを責めるのはやめろ!」
「は?別に責めてないけど」
「元を正せばテメー等が訳分かんないこと言って立夏を困らせてんだろうが」
俺に向けられていた厳しい追及の手が、いつの間にかGDのメンバーへと標的を変える。
「立夏くん、逃げるなら今だよ」
俺の耳元で囁く、葵。
その声に振り返ると、そこには葵だけでなく希とみっちゃんも「早く行け」と促してくれた。
チラッと、汐と遊馬を見ると。
「っ、り、立夏くん!そ、そんな目で見られると、俺…っ」
「ここで鼻血出すなよ。頼稀くん達に気付かれるだろう」
どうやら“B2”である2人も今回ばかりは見逃してくれるようだ。
……よし。
未空と頼稀を葵達に任せてこっそり教室を出た。
廊下に出たところで教室の中から俺を呼ぶ声が聞こえたが、それを無視して全速力で北棟の階段を駆け降りた。