歪んだ月が愛しくて2
桂木先輩達と別れた後、俺は北棟を出て裏庭を歩いていた。
流石にここまでくれば誰も追っては来ないだろう。
未空と頼稀にはGDと接触したことがバレた時点でどの道会長やアゲハに報告されるんだからここは潔く諦めよう。とりあえず尊厳の自由だけは保障してもらおう。
(GDとやり合ったなんて言ったら余計機嫌悪くなるかな…)
会長の機嫌が悪くなったのは飛鳥院さんの別荘から戻った後だった。
理由は分からないが、心当たりがあるとしたらあれしか思い付かない。
『この前の…、体育祭の時のことは忘れて』
でもあれで会長が不機嫌になるか?
………いや、ならねぇだろう。
言いたいことだけ言って追い返してしまったとは言え、忘れること自体は会長にとって取るに足らないことのはずだ。
あれが原因とは考え難い。
まあ、あくまで俺が原因だったらの話だけど。
「にゃあ」
ぼんやりと自分の思考に囚われていると、聞き覚えのある鳴き声が聞こえて来た。
(この声…)
その声に引き寄せられるように足を動かし、辿り着いた先にいたのは芝生の上で寝転びながら白とじゃれ合う瑞樹だった。
イケメンと、子猫。
これは絵になるな。イケメンがやるから余計にか。
「……またお前か」
俺に気付いた瑞樹は白をお腹に乗せたまま顔だけを俺に向けた。
「気付いてたの?」
「あれだけ凝視されて気付かない奴はいない」
「確かに」
瑞樹の元に足を進めると、俺に気付いた白が瑞樹のお腹から降りて俺の足元に纏わり付く。
「久しぶり、……白」
やっぱり、この名前は呼び慣れないな。
自分で自分を呼んでいるようで何とも言えない気持ちになる。
「いつまでもそんなとこに立ってないで座れ。白が落ち着かない」
「………」
ポンポンと、瑞樹が芝生を叩く。
その仕草が隣に来いと言われているように思えて、俺は瑞樹の隣に腰を下ろした。
何も言わない、瑞樹。
どうやら隣に座ったのは正解のようだ。
初対面の時とは打って変わったこの対応に内心ほくそ笑む。