歪んだ月が愛しくて2



しかし、それ以上足を進めることが出来なかった。



「……何の真似?」



俺の足元で土下座する、岩城くん。
床に額を擦り付けるように深く頭を下げ、強引に俺の足を止めさせた。



「すいませんでしたっ!俺達、貴方のことが羨ましくて、転入生なのに覇王に推薦されて生徒会に入ったことや我孫子さんに気に入られていることが許せなくて嫉妬してただけなんです!だから貴方を傷付けようとした…。貴方自身に敵わないと分かっても貴方の家族を傷付けることで貴方を苦しめてやりたかったんです!」

「………」

「本当にすいませんでした!もう二度とあんなことは言いません!」

「………それで?」

「っ、な、何でもします!本当に!だから俺を…、俺達を一から鍛え直してもらえないでしょうか!」



一度も頭を上げることなく必死で許しを乞う、岩城くん。
その姿になけなしの良心がチクリと痛んだが、ここで許してしまったら意味がない。



「謝って済めば警察はいらねぇよ」

「、」

「それがお前の誠意なのか?」

「はいっ」

「足りねぇんだよ」

「何でもします!藤岡さんに認めてもらえるまで諦めません!」



ゆるりと、無意識に口角が上がる。



「何でも、ね…」



(その言葉、後悔しないといいけど…)



彼の言葉に嘘はないだろう。
それを見極めるためにこんな面倒な真似事をしてみたが、思いの外ビビらせてしまったようだ。
そのことに関しては申し訳なく思っている。
でも彼が口にする「何でもやる」がどの程度のものなのかを見極めなくてはならなかった。



「それじゃ、俺のお願い聞いてくれる?」



結果は、合格。

彼になら任せてみてもいいだろう。



でもこれはあくまで“お願い”だ。強制ではない。



「もし、本当に俺の弟子になりたいなら―――」

「、」



但し、反論は許さないけどな。


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