歪んだ月が愛しくて2
「はい、御手洗くん」
「応援団はどうされますか?また去年のように有志で募りますか?」
「そうですね。僕個人としては強制する必要はないと思っているんですが…」
「去年と同じでいいんじゃないかな。士気を高めるために必要と判断すれば各クラスやチームで募ればいいし、必要ないと判断したならそれまでだ。ただ過激なことをしないように我々で注意して見て置かなければいけないね」
「貴方の意見に賛同したくはありませんが、今回はそれでいいでしょう。どうですか、御手洗くん?」
「意義はありません。それに従います」
「ありがとうございます。他に意見のある方はいますか?」
シン…と、手を挙げる者はいなかった。
「いないようだね」
「それでは今日のところは…」
ガラッ。
「あーれ、会議もう終わっちゃった?」
不意にドアが開いた。
意外な人物の登場に思わずギョッとした。
「……我孫子くん、遅刻ですよ」
何で、我孫子がここに…。
「さーせん。昼寝してたら寝坊しましたー」
我孫子の登場に驚いたのは俺だけではなかった。
我孫子が現れた途端、教室内にざわめきが生まれた。
「あの人…」
「みっちゃん、知ってるの?」
「知ってるも何もあの人も学級委員長だからね、D組の」
「え、学級委員長?」
我孫子が?
あの見てくれで?
「……嘘」
不意に我孫子と目が合った。
我孫子は俺の存在に気付くと、獲物を見つけた獣のような目で一歩ずつ近付いて来た。
……嫌な予感。
「よお、こんなところで会うなんて奇遇だな」
「……別にこっちは会いたくなかったけどな」
「相変わらず見た目と中身が伴ってねぇ奴だな、お前は」
「大きなお世話」
フイッと、我孫子から視線を逸らす。
そんな俺を見ていた我孫子は愉しそうにニヤニヤした笑みを浮かべていた。
うっざ。
「ちょ、ちょっと!何で君が我孫子先輩のこと知ってるのさ!?」
するとみっちゃんは俺の制服の袖を引っ張って耳元でそんなことを言った。
しかも何故か焦ってるような口調で早口に捲し立てた。
「何でって…」
GDに勧誘されたから…、なんて言えない。
いや、言えないわけじゃないが、この状況ではちょっと言い難いな。
「だって我孫子先輩はGDのリーダーじゃないか!生徒会の君にとっては天敵のような…っ」
「仲良しなんだよな、俺達」
途端、我孫子はみっちゃんの言葉を遮って馴れ馴れしく俺の肩に腕を回した。
「邪魔」
何が仲良しだ。
そっちが勝手に絡んで来るだけだろうが。