歪んだ月が愛しくて2
「兄貴?」
「岩城くん…」
自分でも笑ってしまいそうになるくらい不安定な自分の声。
きっと、今変な顔をしているんだろうな。
「岩城くん、ここまでついて来てくれてありがとう。後は俺だけで大丈夫だから」
「でも…」
「岩城くんが俺の“お願い”を聞いてくれるなら俺も約束を守る。だから…、ね?」
「……分かりました。アイツ等の気持ちを確認した後、必ずまた来ます」
俺に頭を下げた後、岩城くんは保健室を出て走ってどこかに向かった。
多分他の連中を説得しに行ったのだろうが、そんな岩城くんの後を追うように会長が前のめりになったので急いで保健室のドアを閉めて行く手を塞いだ。
「おい、アイツに何を頼んだ?“お願い”って何のことだ?」
何故かご立腹の会長が俺に詰め寄って来たが、近くにいた陽嗣先輩の後ろに隠れてバリケードを作った。
巻き込まれた陽嗣先輩はいい迷惑と言いたげに苦笑していたが、その後もバリケードが解かれることなく好きにさせてくれたので本気で嫌がってはないように思えた。
「会長には関係ないよ」
「っ、……アイツに頼んだ理由は何だよ。アイツじゃなくてもお前の願いくらいいくらでも俺が叶えて…「岩城くんじゃなきゃダメなんだよ。俺の“お願い”は彼等にしか叶えられない」
「、」
俺の“お願い”は岩城くん達にしか叶えられない。
いや、岩城くん達が叶えてくれなきゃ意味がないんだ。
言われてやるようじゃダメだ。
あくまでも自分達の非を認めて自ら行動を起こしてもらわなければ意味がない。
そのために態々岩城くんを煽ってまでお膳立てしたと言うのに、ここで邪魔されたら全てが水の泡になってしまう。
「……りっちゃんよ、アイツとどう言う経緯で和解したのか知らねぇけどさ、ちょっと言葉足らずなんじゃねぇの?」
「足りてませんか?」
「王様の顔を見てみろよ」
陽嗣先輩の身体から少しだけ顔を出すと、怒ってるような落ち込んでいるような微妙な表情でこちらを睨む会長が見えた。
(どっちにしろ機嫌悪いんじゃん…)
すると、パンッと乾いた音に思考が遮られた。
音の出所はベッドの方。
そこには真っ白のベッドに優雅に腰掛ける九澄先輩の姿があった。
「九澄先輩…」
「今朝ぶりですね、立夏くん」
てか、そこにいたんだ。
気付かなくてごめんなさい。