歪んだ月が愛しくて2
「な、何で…っ」
「……あら?誰かと思えば泣き虫くんじゃない」
未空は信じられないと言いたげに目を見開いて会長を見つめた。
それは俺も同様で。
「久しぶりね。……とは言っても全然久しぶりって感じがしないのは、あれから5年も経ってるのに全然変わってないからかしら?」
「、」
一歩だけ、未空はフラつくように後退した。
まるで現実から目を背けるように、未空の表情は完全に彼女を拒絶していた。
ああ、やっぱり。
未空の女嫌いの原因は彼女なのかもしれない。
そして彼女が未空にとってマイナスの存在だとしたら、俺は…。
「み、尊を…、追って来たの、かよ…」
不自然な口調の未空。
フッと、彼女の口元が弧を描く。
「まだ治ってないのね、それ」
「っ、」
嫌味ったらしく蔑むような口調で吐き出された言葉に、とうとう未空は耐え切れずに走ってどこかに行ってしまった。
「未空!?」
彼女以外の誰しもが未空の名前を叫んだ。
それは会長も同様で、未空の名前を強く叫んで後を追おうとした。
でも会長は二歩目を踏み出さない。いや、踏み出せなかった。
背後から会長の腕に絡み付く彼女が邪魔をして未空を追うことが出来なかったのだ。
チッ、と。
漏れた舌打ちは一体誰に向けてのものだろう。
この状況をイマイチ把握出来ない俺でも、今未空と彼女のどちらを優先すべきかくらいは分かる。
「未空っ!!」
俺は会長の胸を押し退けて未空の後を走って追い駆けた。
保健室を出る間際、「後は頼んだ」と頼稀に目配せして余計な連中に未空の後を追わせないようにした。
何が女嫌いだ。
何が苦手だ。
あれは誰がどう見てもトラウマレベルじゃねぇか。
「あーらら、盗られちゃったわね。貴方の大切な“お気に入り”くん」