歪んだ月が愛しくて2



「……リカってさ、結構分かり易いように見えて本当は誰よりも分かり難いよね」



淡々と言葉を紡ぐ、未空。
それは答えを求めていない独白のように感じた。
そこにはいつもの子供らしさなんてどこにもなかった。



「口に出して言いたくないことや納得出来ないことに対しては結構答えが顔に書いてあって、表情で察しろみたいな空気を出してるんだよね。でも本気で隠したいことはどんなことをしてでも隠し通す。ほんの少しの手がかりすら残さないで平気な顔して嘘を吐くんだと思う」

「いま、は…」

「今の顔は“口に出して言いたくないから雰囲気で察しろ”って顔かな」

「………」



近からずも遠からずの回答に苦笑する。



雰囲気で察しろ、か…。

それを分かってるくせに俺の口から言わせようとするなんて質が悪い。



でも、そうか…。

俺、いつもそんな顔してたんだ。

だからカナも俺の兄ちゃんに対する気持ちに気付いたのかもしれない。



「正解?」



俺の本心を見抜こうとする瞳がグッと近付いて来る。



「……正解。てか、聞く前から分かってたでしょう」

「うん、分かってた。ごめんね、試すようなこと言って」

「別に気にしてないけど…。それに未空が確信を持ったのはカナが皆の前であんな風に言ったからだろうし」





『っ、でも、お前は昔からアイツのことが好きだったじゃねえか!それなのにあんな風に突き付けられてすんなりと納得して…、悔しいとか悲しいとかそんな感情はねぇのかよ!?』





「そうだね。あれが決定打だったかも」



隠していたものを暴かれる感覚は気持ち悪い。
腹の中から得体の知れないものが込み上げて来るようで吐き気がする。
こんな感覚を毎回味わっていたら身が持たない。
そのくせ誰にも言えない秘密を抱えてるなんてマゾヒストと疑われそうだ。



「ねぇ、まだ好き?」

「どう、かな…」

「結婚しちゃうのに?」

「………」



好きか嫌いかと問われれば間違いなく好きだ。
でも今でもそこに恋愛感情があるのかと聞かれたら正直分からない。
兄ちゃんの結婚話が出たのをきっかけにちゃんとこの想いと訣別しようと決めたはずなのに、いざとなると言葉に出来なかった。
祝福の言葉を言えなかった時点で自分でも気付いていたが、きっと俺はまだ心のどこかで兄ちゃんへの想いを捨てられずにいるのだろう。



「多分、俺がちゃんと兄ちゃんに“おめでとう”って言えた時、このモヤモヤしたものが消えてくれるんだと思う」

「………」



でも彼等と一緒にいる時だけは、このモヤモヤとした感情を忘れることが出来た。
考える暇もなかったと言った方が正しいかもしれない。


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