歪んだ月が愛しくて2
未空の2杯目のカレーをよそってから、俺も未空の向かいの席に座ってカレーを食べ始めた。
……うん、久しぶりに作ったから不安だったけど意外と上手く作れたかも。
カレーを作ったのはアイツに責付かれて以来だったしな。
「……懐かしい」
「何が?」
「え、いや、久しぶりにカレーを作ったから懐かしいなと思って」
「前はいつ作ったの?カナちん達に作ってあげてたの?」
「あー…どうだったかな。俺あんまり家には帰ってなかったし…」
「え、家に帰ってなかったの?じゃあどこで寝泊まりしてたの?」
「文月さんの家とか、こう……友達の、家とか…」
あれはカイを拾って間もない頃だった。
『なあ、今日何食べたい?何かリクエストとかある?』
『『『何でもいい』』』
『おっと、それ作り手に一番言っちゃいけない台詞だからね。俺以外には言っちゃダメよ』
『じゃあ米』
『食べられる物』
『………』
『そうじゃなくて!君達が人間の三大欲求を全然求めてないマゾだってことは知ってるけども、せめて一日一食くらいはまともな食事しないとマゾどころか人間やめることになるからね!俺はそれを心配してるの!』
『誰がマゾだ、ふざけんな』
『シロさんはマゾじゃない、シロさんだ。天性のマゾヒストがシロさんを語るな汚らわしい』
『何で俺が滅多刺し!?俺は君達の食生活を心配してるだけなんですけど!?』
『余計なお世話だ』
『必要ない。シロさんの食生活は俺が守る』
『とか言ってハクちゃん料理出来ないじゃん。作ったもん全部ダークマターじゃん』
『………出張料理人を呼ぶ』
『金持ちか!?』
『ハク、俺他人の飯無理。だったら食わない』
『で、では、俺が…っ』
『出来ない奴が言うんじゃねぇよ』
『す、すいま、せん…』
『てか、さっきからカイちゃんが大人しいんだけどどうしたの?もしかして目開けたまま寝てた?』
『寝てねぇよ。テメーが何食いたいか聞いて来たから考えてたんだろうが』
『カイ、何か食いたい物あるのか?』
『………シロの、カレー』
『は?』
『だから、シロの作ったカレーが食べてみたい。……ダメ?』
『ダメ、じゃねぇけど…』
『じゃあ作って。それ以外は何も食べないから』
『(脅しか…)公平』
『なーに……って、何で俺睨まれてるの?』
『お前のせいだ』
『えー、人のせいにするのは良くないと思うな。それに偶にはいいじゃん、折角うちの末っ子ちゃんがリクエストしてくれたんだから作ってあげなよ。俺も久しぶりにシロちゃんのカレー食いたいし』
『お前に作るのは何か癪だ』
『何で!?偶には俺にも楽させてよ!』
『お、俺っ、シロさんのカレー、楽しみ、です…』
『よし、作るか』
『何この扱いの違いは!?露骨過ぎて怖いんだけど!?』
『さっきから煩ぇなクソハチの分際で。シロの邪魔すんなら飯抜きにすんぞ』
『締め出すか』
『いやいや、ここ俺の家だからね!居候は君達の方だからね!』
『ハク、米研いだことあったっけ?』
『はい、出来ます』
『シロ、足りないもんあったら買って来る』
『サンキュー。でも今のところ大丈夫そうだわ』
『って無視かい!!』
………うん。
カレーの思い出と言うか、ただ公平が喧しかっただけな気がする。
「ふーん…」
「え、何ふーんって?」
「……別に。ただリカの友達ってどう言う人なのかなって思ってさ。そう言う話聞いたことなかったから」
「どう言うって…、別に普通だよ。喧しくて、従順で、キチガイで、負けず嫌いで、怖がりな…」
「それどんだけ忙しい性格の人?」
あ、説明の仕方間違えた。
それぞれの特徴を言ったつもりだったんだけど…、まいっか。
どうせ未空がアイツ等に会うことはないんだから。