歪んだ月が愛しくて2
立夏Side
どこか遠くの方から聞こえて来る小鳥の囀りに、カーテンの隙間から差し込む日の光。
そして自分の身体を包む温もりをぼんやりとした頭で認識して朝を迎えたことを知らされた。
でも瞼が重い。
太陽の光と眠気の相乗効果によって、未だ目を瞑ったままベッドの中から出られないでいた。
もぞもぞと、ベッドの中で何かが動く。
それは温かく程良い固さで、クーラーの風で冷えてしまった身体には丁度良い温もりの抱き枕だった。
首に、何かが当たる。
何かが吸い付くように、時折チリッと痛みが走る。
顔を背けてやり過ごすと、また何かが動いた。
もぞもぞ。
動くそれに頬擦りすると、更に抵抗するような動きをしたから力一杯抱き締めて離さなかった。
「………おい、これはどう言う状況だ?」
「ゔぅ〜、とてつもなく美味しい状況なんだけどもう色々と限界!お願い助けてっ!」
………煩い。
まだ眠いのに邪魔するな。
唸り声と共に布団の中に顔を隠す。
もう少しだけ寝かせてくれ。
昨日は色々と頭使ったせいで疲れてるんだよ。
もぞもぞと、動きが止まる。
それ幸いと布団の中に引き摺り込み、ぎゅっと抱き締めると。
パシャッと、シャッター音に身体が反応した。
反射的に身体が動いて、寝惚けた頭のまま兎に角捕まえなければと言う思いから一番近くにいた人物に飛び掛かった。
ガタンッと、身体が床に倒れる音が響く。
はらりと、宙に舞う薄い掛け布団がその姿を隠した。
結城さんの店で見張られて以来、時折妙な視線を感じていた。
外だけだと思いそこまで気にしていなかったが、昨日はそれとは違う嫌な視線を感じたため警戒していたところにこうもあっさりと姿を見せるとはな。
掛け布団を捲って、その面を拝んでやると。
「テメー、いい加減にしろよ。こっちはな、テメーの遊びに付き合ってやるほど暇じゃ、な…」
「………」
………ん?
片手で胸倉を掴んだままそれの上に馬乗りになって、もう片方の手を顔の横に付いた体勢(※床ドン)で至近距離から睨み付けるはずだったが、柔らかい大地色の髪にビー玉のような空色の瞳、そしてキョトンとした幼い顔立ちに見覚えがあり咄嗟に顔の筋肉を緩めた。
「えっとー…」
見覚えどころの話ではない。
昨日、彼が寝たベッドに潜り込んだのは俺じゃないか。
すると、キョトンとした顔が一変して。
「………いやん、リカに襲われちゃった♡」
……うん、待って。
状況を整理させてくれ。
その体勢のまま思考を巡らせていると、またシャッター音が聞こえた。
ぎこちない動作で音の方に顔を向ければ、何故か頼稀が自分のスマートフォンをこちらに向けて構えているではないか。
は?
困惑する俺を余所に、頼稀はスマートフォンから顔をずらして小馬鹿にするような笑みを浮かべた。
「反射神経は衰えていないようだが、自分を食おうとしてる奴と安易に同衾するのはどうかと思うぞ」
え、待って。
何でここに頼稀がいるの?
ここ俺の部屋だよね?
「この俺に開けられない鍵はない」
エスパーか………じゃないっ!
「泥棒か!?」
「リカ、そのツッコミも違うと思うよ」