歪んだ月が愛しくて2
「立夏」
その声にハッと我に返ると、休憩所の壁に寄り掛かってボケッとしている俺に先程まで未空達と楽しそうに喋っていたはずの会長が話し掛けて来た。
「な、何…?」
いつの間に…。
動揺を悟られまいと、手に持っていたコーヒーの缶に力が入る。
「やらねぇのか?」
「は?」
会長は親指を突き出してレーンの方を指差した。
ああ、やるってボーリングのことか。
「あー…ちょっと休憩、もう少ししたら戻るよ。そっちこそ折角来たんだから時間まで目一杯遊んでれば?」
「一服したらな」
そう言って会長は俺から少し離れた喫煙スペースで煙草に火を点けた。
相変わらず未成年のくせに様になってるところはムカつくが、今日は休日で私服と言うこともありいつも以上に大人びて見えた。
白のVネックの半袖の上から七部丈の黒のジャケットを羽織り、黒のスキニージーンズを履く会長はどう見ても高校生には……いや、未成年とはとても思えない妖艶な雰囲気を漂わせていた。
会長の顔が無駄に整っているのは今に始まったことじゃないが、シンプルだけどお洒落な私服と相まって周囲の視線を総取りしていることに本人は気付いているのだろうか。
「…ん?」
不意に会長と目が合った。
「あ、いや、別に…。それより未空とちゃんと話せたんですか?」
「ああ…」
「そ、そっか、良かったですね」
「ああ」
………いや、気まずいって。
咄嗟にこの話題を振った俺が悪いんだけど、もう少し会話を続けようよ。
でもこれ以上は聞いちゃいけない気がするから俺から突っ込んで聞きたくないし、会長が気を利かせて別の話題を提供してくれるとも思えない。
こうなったら早いとこコーヒーを飲み切って皆のところに戻るしかない。