歪んだ月が愛しくて2
「でも君は無理をする子ですから…」
「え?」
「何かあったらいつでも相談して下さい。僕では頼りないかもしれませんけど僕だって立夏くんに頼って欲しいと思ってるんですよ」
「………」
頼りないなんてそんなこと一度だって思ったことはない。
いつも迷惑掛けてるのは俺の方なのに九澄先輩はいつも笑って受け止めてくれて自分のことのように俺のことを心配してくれる。
そんな人が頼りないはずがない。
「俺、本当に大丈夫ですよ。ちゃんと寝てますし腹一杯飯食ってますし、それに…「立夏くん」
そもそも俺には九澄先輩に心配してもらえる資格なんてない。
「君は強い子です。……でもだからこそ脆い」
「もろ、」
「いつでも手を伸ばして下さい。君の手を引きたいのは尊だけではありませんから」
「………」
また受け入れてくれた。
あんな拒絶したような態度を取ったのに、何で…。
「……あ、りがと、ございます」
「いいえ」
……分からない。
俺にはそんな価値なんてないのに。
どうして会長も九澄先輩もこんな俺なんかに手を差し伸べてくれるんだろう。
後輩だから?仲間だから?
それとも他に利用価値があるの?
「……ょ…」
底知れぬ不安が渦巻く。
もう逃げないって決めたばかりなのに。
「………だ…ぶ」
……逃げるな。逃げるな。
『なら、逃げるのはもう終わりだな』
逃げちゃ、ダメなのに。
「藤岡っ!」
「、」
俺を呼ぶ声。
それと同時に強い力で肩を掴まれた。
「……ぁ、なに?」
「何じゃないよ。君の方こそさっきから何ぼけっとしてんのさ?」
「あー…ごめん。何か腹減っちゃって…」
あははは…と、適当に笑って誤魔化す。
「はぁ?君バカじゃないの?さっき昼食べたばっかだろう」
「だね。忘れてた」
「全くどこぞの猿じゃないんだからしっかりしなよ」
「ごめん、ごめん」
……あれ?
何か、変だ。
上手く笑えない。
口元が引き攣ってぎこちない。
だから気付かなかった。
そんな俺を見つめる憂いを帯びた紫暗の瞳に。