歪んだ月が愛しくて2



「おい、その汐って奴はどいつだ?あの連中の中にいるのか?」

「え、汐ですか?汐は………ほら、あそこで手を振ってるのが汐ですよ」

「アイツか…」

「って、ちょっと待ったぁああ!!アンタ今何しようとしてんだよ!?」

「あ?何ってゴミを捨てようとしてるだけだろうが」

「どこに!?ゴミ箱ならあっちだから!てか、その構えは捨てるんじゃなくてぶん投げるだからね!」

「大丈夫だよリカ。多分みーこは汐と言う名のゴミ箱にゴミを投げ捨てようとしてるだけだから」

「全然大丈夫じゃねぇよ!そもそもまだ中身入ってるじゃん!未開封じゃん!捨てるなら中身なくしてから捨てなよ!」



いくら汐がイジられキャラだからってあまりにも扱いが雑過ぎる!

普段から頼稀や遊馬にイジられてるんだから偶には優しくしてやれよ!誰か!



「喧しい」



その声と同時に背後から頭を叩かれた。
叩かれた頭を押さえながら振り返ると、そこには不機嫌丸出しの頼稀と反対に心底楽しそうな表情を浮かべる陽嗣先輩と九澄先輩が立っていた。



「お前、何こんなところで油売ってんだよ。1ゲームしかやってねぇくせにもうバテたのか?その年で運動不足とか相当ヤバいぞ」

「ねぇ、辛辣過ぎない?何か俺に恨みでもあるの?」

「ねぇよ。ただの八つ当たりだ」

「あ、自覚はあったんだ」

「風魔くんは立夏くんを独占する尊が気に入らないみたいですよ」

「まあ、ゲームそっちのけでりっちゃんのご機嫌取りに夢中な王様は気付いてないだろうけどな」

「俺のご機嫌取り?何で?」

「……そんなんじゃねぇよ」

「それ答えになってないんだけど」

「陽嗣の戯言だ。お前が気にすることじゃない」



だから答えになってないって。

誤魔化したいならもう少し上手くやれよな。



「……どうでもいいが、早く靴脱いで返して来いよ。昼飯食いに行くぞ」

「え、昼飯ってことはもうボーリング終わり?勝負は?」

「ゲームすっぽかして休憩ばっかしてるお前と神代会長がビリに決まってんだろう。と言うわけで全員分の飲み物宜しく」

「そんなぁ…」

「何かリカとみーこがビリって新鮮だね」

「てか、尊の人生で初の黒星じゃね?」

「完全無欠の王様でも立夏くんが絡むと形無しですからね」

「勝手に言ってろ」



会長を取り囲むように自然と皆が集まって来る。
学園では見慣れた光景も外に出れば変な感じがして落ち着かない。
それと同時に胸がスースーするような寂しさを覚える。
先程までの雰囲気を一切感じさせない会長の平然とした態度に、想定内とは言えショックを受けている自分がいた。
こんな簡単に切り替えられるほど会長にとって先程の空気は慣れたものだと教えられた気がした。


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