歪んだ月が愛しくて2
リカの言葉をきっかけに、俺達1年メンバーは杜山くんを囲むようにベッドの周りに集まり、俺とリカの後ろからみーこ達3人が顔を出していた。
すると杜山くんはベッドに座ったまま罰が悪そうに小さな声でこう言った。
「………悪かったよ、言い過ぎた」
「え?」
あれま、素直。
見た目がヤンチャ系だからもっと悪ぶってる感じかと思ったのにちょっと拍子抜けだな。
「でもお前はマジで心配し過ぎ。俺が族の頭張ってることは知ってんだろう。こんな怪我しょっちゅうだし一々心配してたらキリがねぇよ。それにお前に心配されるとムズムズするって言うか何つーか…」
「それでも心配しちゃうよ。史くんが暴走族に入ってるのは知ってるし怪我だって今回が初めてじゃないけど、やっぱり史くんは僕の大切な幼馴染みなんだから」
「っ、ああクソ!だからそう言うのだっつーの…」
「そう言うのって?」
「何でもねぇよ!」
「……ねぇ、もしかしてこの人照れてる?」
「顔真っ赤だからそうなんじゃない」
「なっ!?」
「え、史くん照れてるの?何で?」
「て、照れてねぇよ!勘違いすんな!」
「うわっ、こんなところでイチャ付かないでくれる?周り見えてないの?」
「これが俗に言う無自覚バカップルって奴か」
「それは頼稀くん達にも当てはまると思うよ」
「頼稀くん達の場合は無自覚じゃないだろう」
「じゃあ自覚済みバカップル?」
「それってただのバカップルってことじゃん」
「うわあぁあああ!!俺のエンジェルがぁぁああ!!やっぱり外に男作ってたんだぁぁあああ!!」
「いや、言い方…」
1年メンバーの和気藹々とした雰囲気に杜山くんは困惑しながらも溶け込みつつあった。
「なあ、アンタ名前は?」
そんな中、杜山くんがリカに名前を尋ねた。
杜山くんの発言は何ら不自然なことではない。
いくらアオの友達とは言え見ず知らずの人間が見舞いに来たら名前を尋ねるのは当然のことだろう。
でも…、
「………藤岡です、宜しく」
この時のリカの態度はバリバリ不自然だった。
目元を三日月のように細めて一見人当たりが良さそうに演じているのに、帽子の鍔の部分を少しだけ下げて表情を隠そうとしていた。
「そうだ、史くんに皆のこと紹介するね。まずこちらの3人は生徒会の先輩方で…」
アオは気付いていない。
「仙堂未空です。俺とリカも生徒会の一員だよ、宜しくね」
「風魔頼稀だ」
「佐々山希。エンジェルは俺の心のオアシスです」
「佐々山、いい加減しつこい。武藤のクラスメイトの御手洗邦光だよ」
「花房汐」
「日永遊馬です」
「あ、どうも…、杜山史和です」
でも俺と頼稀、そしてみーこだけはリカの違和感を感じ取っていた。