歪んだ月が愛しくて2



「あの人達が仲良くないってことは絶対にない!そもそも気を許した相手じゃなければ絶対に傍に置かないような人だし、周りもそんな雰囲気を感じ取ってるから特別感を出して“側近”なんて呼び方してるんだ!つまりあの人達の関係は誰から見ても分かるくらい特別なもんなんだよ!」

「わ、分かったから、少し落ち着いて…」

「それに八重樫さんみたいに本業がある人は中々一緒にいることは難しいんだ!他の2人もきっと学生だから四六時中一緒にいることは出来ないんだと思うし!」





―――え、





「待って下さい、今…“八重樫”と言いましたか…?」

「お、おいおい…、“八重樫”っていやつい最近どっかで聞いたことあったよな」

「恐極組を壊滅させたのも“八重樫”って言ってたよね?もしかしてその“八重樫”が白夜叉の側近なの?」

「さあ…、アンタ達が言ってる八重樫さんがどの八重樫さんかは知らないけど、あの人の側近と言われている人は白桜会の若頭で“白羊の異端児”とまで言われ恐れられている―――八重樫晋助さんのことだよ」

「「「っ!?」」」

「………」



その事実に驚きを隠せない。
同時に白夜叉への認識を改めた瞬間だった。

だってリカに復讐しようとした恐極に加担した恐極組を壊滅させたヤバい人が白夜叉の側近って…。
それって八重樫より白夜叉の方が強いってことでしょう?
そんなヤバい人を従えてる白夜叉ってどんだけヤバい人なんだよ。



それに…、



「まさか、こんなところで再びその名前を聞くとは思いませんでしたね…」

「ああ、よりによってあの八重樫が白夜叉側かよ…。てか、これってりっちゃんが襲われた件と何か関係あんのか?」



……何だろう。

何か、凄くモヤモヤする。



「風魔、お前は今回の族狩りと立夏の件に何らかの関係があると思うか?」

「考え過ぎでしょう。八重樫の名前が上がったくらいで二つの事件を結び付けるのは強引過ぎる。それに学園内で起こったことを八重樫が把握するのは難しいでしょうし」



何かよく分からないけど。

上手く説明出来ないけど、これ以上聞いちゃいけない気がするんだ。



「それはそうですが、無視出来ない事実でもあります。ここは八重樫組に探りを入れるべきではありませんか?」

「八重樫組の上にいる白桜会は東日本の二大巨頭の一角に君臨するほどの組織だ。もし皇が探ってることがバレたら後々面倒なことになるぞ」

「だったら俺の方面から調べてみるか?」

「……いや、お前でも荷が重いだろう。こう言う場合は“風魔”が適任だが…」

「言いましたよね、アイツを売るようなことはしないって」



多分、モヤモヤの正体は不安だ。

でも何が不安なのか、どうしてこんなに気持ち悪いのか分からない。



底知れないものに支配される恐怖が、俺を襲う。



「他の2人のことも教えてやれよ」

「あ、ああ…、後の2人は“ナツ”と“カイ”って呼ばれてる人達だ。それ以上のことは分からない。あの人の側近で……いや、あの人も含めて本名を公にしているのは高屋さんと八重樫さんだけで、他の人は皆あだ名みたいなので呼ばれているから本名は勿論どこで何をやってる人なのかも公にはされてない」

「あだ名?」

「あの人達だけが口にしていい名前みたいな奴。高屋さんは“ハチ”、“マッドドッグ”の異名を持つ人は“ハク”、八重樫さんは“ヤエ”、それとさっき言った“ナツ”と“カイ”、そしてあの人は“シロ”って呼ばれてるんだ」





―――(シロ)



それは何色にも染まることが出来て、尚且つ新しい色を生み出す時に必要な色。





俺の大切な人もそんな影響力を持つ人で、俺もその影響を受けた1人だった。

そんな彼を色で例えたら、限りなく透明に近い銀色だと思う。

だからその色が本当に透明になって消えてしまったら…、俺の世界は何色になってしまうんだろうか。





「―――シロ、か…」





………ああ、分かった。



この底知れない恐怖と、気持ち悪い感じの正体。



俺が不安なのは、ただ一つ。



俺の前からリカがいなくなること。



それだけだった。


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