歪んだ月が愛しくて2
頼稀は冷蔵庫からオレンジジュースを取り出してコップに移し替える。
次に淹れたてのコーヒーをカップに注ぎ、後はみっちゃんのお茶を用意するだけだった。
「さっきの…、お前に八つ当たりしてたって話だけど」
俺は頼稀の作業の邪魔にならないように冷蔵庫に寄り掛かりながら耳を傾ける。
「少し前に言われたんだ。俺のやってることはエゴだって」
「エゴ?」
「俺はアイツを守りたかった。もう二度と傷付かないようにアイツが背負ってるものの全てから守ってやりたかっただけなんだ。昔のように笑っていて欲しかったから…」
頼稀は静かに語り始めた。
すぐにアイツの正体がリカだと気付いた。
頼稀がそんな顔するのはリカとのんちゃんのことだけだから。
「でも否定された。俺のやってることはアイツのためじゃない、自分のためだって」
「うん…」
「そう言われて気付いた。……いや、本当は初めから分かってたんだ。ただそれを認めたくなくて、アイツのためって大義名分を掲げてずっと罪の意識から逃げていた。お前にはでかいこと言って置きながら俺は自分のことしか考えてなくて…。こんなの最低だろう…」
「……そんなことない」
「同情なんかいらねぇよ」
そう言って頼稀は自嘲気味に笑った。
俺の前では滅多にそんな顔しないのにそれだけ自己嫌悪に陥ってるのかもしれない。
だから俺も珍しく頼稀のことが心配で…、
「同情じゃないっ!」
そして何よりムカついた。
「だって頼稀はいつも守ってたじゃん!理由はどうであれどんな手を使ってでもリカを守ってたよ!俺はそんな頼稀を見て凄いと思ったし、出来ることなら俺も…、そんな風になりたいって思ってたよ…」
頼稀は間違ってない。
正直頼稀が話してくれたことの半分はイマイチよく分からないけど、俺にとって重要なのは頼稀がリカのことをどう思ってるのかってことだけ。
だからどう言う事情であれリカを大切にしている頼稀のことを否定したくなかった。いや、出来るわけがないんだ。
「誰が頼稀にそんなこと言ったか分からないけど、その人だって頼稀がやって来たことを全て否定したわけじゃないと思う。ただ頼稀に自分のことをもっと大切にして欲しかったんだよ」
頼稀には分かって欲しい。
本当にリカのことを守りたいなら自分が犠牲になるだけじゃダメだと言うことを。
「俺を、大切に…?」
「頼稀にはリカの他にも大切な人がいるだろう。アゲハや汐達やのんちゃんだって…。自分の人生を投げ出してリカを守ったってそんなことリカは絶対喜ばないし、きっと自分のせいで頼稀を苦しめてると思うから…」
「それはない」
「それでもリカは自分を責めると思う」
「………」
「エゴだっていいじゃん。だってそれは頼稀にとって譲れないものなんでしょう。胸張って堂々としてなよ。この際開き直っちゃえ!」
あれ、俺何が言いたかったんだっけ?
頭に血が上って忘れちゃった。
兎に角俺が言いたいことは…、
「頼稀は最低なんかじゃないよ」
「………」