歪んだ月が愛しくて2
「あたしぃ、お兄さんがお店に入って来た時からずっと気になっててぇ。さっき目が合った時、お兄さんがあたしの運命の人だって確信したんですぅ」
「やだっ、この子も格好良い!さっきゲームしてる時は可愛い系だと思ったのに、やだっテンション上がるぅ!」
(や、やっちまった…)
いや、そりゃそうかもしれねぇけど。
俺や九澄に女が近寄って来たら当然尊と未空も狙われるに決まってっけど、だからっていくら頭が悪くてももう少し空気読んで相手を選んでくれよ。
どう見てもこの中で一番話し掛けるなオーラを出してる2人に近付くとかどんだけ勇者なんだよ。
負け戦って分かってて挑むとか死に急いでるようなもんだろうが。
しかも2人の怒りの矛先は俺に向けられていた。
「陽嗣、テメー…」
「リカがいるのに勘違いされたらどうしてくれるんだよ。責任取ってくれるわけ?」
そんな無茶な。
てか、俺のせいみたいになってっけど、俺が連れて来たわけじゃねぇからな。
俺だったらもっとマシなの連れて来るわ。
「ねぇ、あたし達の話聞いてるぅ?」
「「、」」
(げっ!?)
ギュッと、女共の胸が尊と未空の腕に押し付けられた。
それを見た瞬間、ヤバいと思った。
尊はこう言うのに耐性があるけど、女嫌いの未空は皆無のはず。
案の定、未空は女に触れられた瞬間、ガチッと固まってしまった………が、殺人鬼並みの冷たい目で「どうにかしろ」と俺に訴えて来た。
……仕方ねぇ。
ここはお兄さんが一肌脱いであげようかね。
「いい加減空気読んでくんねぇかな。アンタ達みたいな顔面お化けに俺達の相手は務まんねぇよ」
俺の腕に巻き付く女の腕を振り払って距離を取る。
胸糞悪い香水の香りを態とらしく手で振り払うと、漸くこの状況を理解した女の1人が口を開いた。
「……え?何、意味分かんない。あたし達読モやってんだよ?“ルビー”って雑誌知らないの?」
前言撤回。
何一つ理解してなかった。
「知らないねぇ。そもそもそんな低俗な雑誌に興味ねぇし、読モって言ったって結局は素人使ってコスパ下げてるような雑誌は見る価値もねぇからな」
「はぁ!?何それひっどーい!“ルビー”を知らないのが恥ずかしいからってそんな言い方することないじゃん!」
いや、全く恥ずかしくねぇし。
寧ろ“ルビー”を否定したいんじゃなくて、読モ如きでマウント取ってるオメー等を否定してんだよ。
「はぁ…、女好きの貴方に期待した僕がバカでした。こう言う頭の悪い人種には直接的な言葉を使わないと理解出来ないんですよ、可哀想に」
見兼ねた九澄が重い口を開く。
「しっかりして下さいよ」の一言は心外だが、正直この連中の相手をしてると俺まで頭可笑しくなりそうなのでここは素直に九澄に任せることにしたが。
「失礼ですけど、僕達は貴女方のような頭も顔も悪いビッチとセックスしたがるようなバカではありませんし、相手にも困っていませんから他を当たってもらえますか迷惑なので」
いつものエセ王子スマイルで爆弾投下しやがった。
はっきり言い過ぎじゃね?と視線で諌めると、九澄は「面白くなったでしょう」と満面の笑みで返して来た。
(本当、この性悪め…)