歪んだ月が愛しくて2
「ちょっと!人のこと無視してんじゃないわよ!」
どんなに喚こうと尊が女に興味を持つことはなかった。
それどころか尊は鬱陶しそうに女の腕を振り払い、まるで見せ付けるかのようにりっちゃんに体重を預けて密着した。
まるでお前の入る隙はないと言わんばかりにピタッと。
しかし、その行動が女の心に火を点けた。
「……大体誰よコイツ?タケルに付き纏ってるストーカー?」
(ストーカーはオメーだろうが!!)
女は尊に肩を抱かれているりっちゃんを見るなり標的を変えた。
何様のつもりか知らないが、女はりっちゃんの肩を押して尊から遠ざけた。
「いや、別に俺は…」
「俺?アンタ男だったの?」
「どう見ても男ですけど」
「ふーん、そう…」
「おい、何リカのこと突き飛ばした挙句ストーカー扱いしてんだよ。本当のストーカーはお前だろうが」
「未空、やめなって」
「でもっ」
「ふふっ、まあアンタが男ならどうせ相手にされることはないでしょうけど一応忠告してあげる。いい?アンタとタケルじゃ住む世界が違うの。アンタみたいな隠キャが本気でタケルに相手にされるわけないでしょう」
「………」
「あ?テメー何言って…」
「アンタがタケルに近付くなんて100年早いのよ」
おいおい、マジで何様だよこの女。
いくらりっちゃんがお人好しでも流石にこれにはキレるだろう。
いや、寧ろキレるべきだ。
こう言うバカには一度ちゃんと分からせてやらないとどこまでも付け上がるからな。
「おやおや、どの口がほざいてるんでしょうね」
「りっちゃん、相手が女だからって手加減してやる必要はねぇよ」
「リカ、俺もう我慢出来な…「そうですね」
でもりっちゃんの口から出た言葉は俺の予想していたものではなかった。
「え、リカ、ちょっと…っ」
「俺、邪魔みたいだからあっちでゲームして遊んでるね」
そればかりかりっちゃんは未空の制止も聞かずこの場から立ち去ろうとする。
「立夏っ」
途端、尊がりっちゃんの腕を掴んで引き留めた。
あの尊を動揺させるなんて流石はりっちゃん……、じゃない。
今はそんな暢気なこと言ってる場合じゃねぇぞ。
とっとと弁解して誤解を解かねぇとりっちゃんの中の尊の好感度がだだ下がりに…。
「……会長の女関係にとやかく言うつもりはないけど、俺を巻き込むのはやめてくんない?」
「、」
時既に遅かったか…。
ドンマイ。
そう言ってりっちゃんは尊の手を振り払い“B2”の兵隊2人を連れて奥の方へ行ってしまった。
一方、りっちゃんに拒絶された尊は見るからにショックを受けていた。
効果音で言うと「ガーン」みたいなやつ?
明日の何たらみたいに真っ白になって項垂れてんじゃん、可哀想に。
「あちゃー…」
「リ、リカがキレた…」
「まあ、普段の行いが悪いせいですけどね」
「そんな風に言ってやるなよ。いくら何でも誤解されたままじゃ尊が可哀想じゃねぇの」
「こんなみーこ初めて見たかも…」
「いつまでもああ言うバカを放置して置くから悪いんですよ。……まあ、今回ばかりは同情しますけど」