歪んだ月が愛しくて2
「さてと、立夏と頼稀も仲直りしたことだし、気を取り直してパーッと遊ぼうぜ!」
パンッと両手を合わせて、希は先程までのしんみりとした空気を一掃した。
……いや、しんみりはしてないか。
後半はいつも通り騒いでただけだし。
「立夏、お前はこれをやりに来たんじゃないのか?」
そう言って頼稀が指を差したのは、ゲーセンには必ずと言って置いてあるパンチングマシーン。
ゲーセンに来たらこれをやらなきゃ始まらない。
とは言え俺も過去に一度しかやったことないけど。
しかもその時は………うん、まあ若気の至りって奴だよね。色々あった。
「……何これ?ボクシング?」
「違うよ。確か力比べみたいな奴だよね?」
「そう。あの掌の中心を殴って自分のパンチ力を測るんだよ。汐もよくやってるよな?」
「俺は結構得意だぜ。この前自己ベスト更新して200出したしな」
「へぇ、立夏もこう言うのが好きなんだ」
「好きって言うか…、ストレス発散のためかな。それに機械通して何かやるより自分の手で直接打ち込んだ方がやり甲斐あるし」
「お前らしいな」
まあ、言い方を変えれば機械系が苦手ってことなんだけど。
てか、汐凄いな。
自己ベスト200kgってことは相当強いじゃん。
流石“B2”の準幹部。アゲハと頼稀が目を掛けてるだけはあるってことか。
「汐もやる?」
「やるやる!遊馬もやろうぜ!」
「俺はパス。後ろで見学させてもらうよ」
「ちぇ、何だよノリ悪ぃな…。じゃあ頼稀くんはどう?」
「興味ない」
「頼稀は格ゲーの方が好きだもんな」
「お前に合わせてやってんだよ」
「御手洗と葵は…」
「やるわけないだろう」
「僕もこう言うのはちょっと…、ごめんね」
「だよな…」
結局、パンチングマシーンに挑戦するのは俺と汐だけだった。
皆には待ってる間退屈だろうから他のゲームで遊んでて、と軽く促したのだが…。
「いいよ、ここで見学してるから」
「ギャラリーが多い方がやる気出るっしょ」
「手抜くなよ」
と、よく分からないことを言われた。
別に見学するのは構わないけど、大して面白くもないのに…。
それに手を抜くなって簡単に言ってくれるけど、手を抜かなかったらどうなるか既に経験済みの俺にとっては無茶な要求だった。
思い出しただけでも頭が痛い。
あんな恥ずかしい思いは二度とするものか。
まあ、頼稀の目は誤魔化せないにしても、他の皆には不自然に思われないくらいに手加減すればそこそこのスコアは残せるだろう。