歪んだ月が愛しくて2
「こんのクソガキ共!何てことしてくれたんだ!」
それからすぐ騒ぎに気付いた店長が俺達の元へやって来た。
「あの、壊したのは俺です」
「お前か!ったく、どんな遊び方したらあんな頑丈なもんが壊れるんだよ!見事にボロボロじゃねぇか!どう落とし前付けるつもりだぁ!?」
「弁償します」
「当然だ!いいか、ガキだからって謝って許してもらえると思うなよ!親に泣き付くなり闇金で借金するなり何とかして金かき集めて来い!今日中にだ!」
「分かりました」
この人も昔から変わらねぇな。
決して悪い人じゃないんだけど、典型的な長いものに巻かれるタイプの人間だから自分より下と見做した者にはとことん口調が横暴になる。
反対に自分より上の人間に対しては笑っちゃうくらいゴマ擦ってるから扱い易い人ではあるんだけど。
すると見兼ねた友人達が俺と店長の会話に割って入る。
「おいおい、いくら何でも今日中ってのは無茶だろうよ」
「見ての通り彼は学生なんです。こちらは非を詫びて支払う意思も示しているのですからもう少し猶予があってもいいのでは?」
「関係ない奴はすっ込んでろ!期限は今日中だ!それ以上の譲歩はしない!」
「それっていくら何でも横暴じゃん!こっちは払うって言ってんだからもう少し待ってくれてもいいだろう!」
「そうですよ!僕達が証人になりますからお願いします!」
「フンッ、ガキってのは口だけは一丁前だが、大人と違って簡単に嘘を吐く生き物なんだよ。俺はそう言うガキを何人も見て来たからよく分かる。お前のような根暗でオタクっぽい奴は一見従順そうに見えるが、実際は姑息で卑劣で、どうにかしてこの場から逃げたくてそれしか考えてねぇんだろう」
まあ、ある意味逃げたいってのは当たってるな。
「あ?」
「おい!テメー言っていいことと悪いことがあんだろうが!」
「いい年した大人のくせに人を見掛けで判断するとはとんだ能無しだな。うちの汐の方がまだ救いようがある」
「そう、俺の方が……、って何で俺の話になってんだよ!?比較対象が可笑しいだろう!!」
「喚くな。話がズレる」
「コイツ、よくも俺の前でリカのこと貶してくれたな…。殺してやろうか?」
「賛成だ」
「オメーも何賛成してんだよ!?りっちゃんがいる手前穏便に済ませようとか思わねぇのかよ!てか、オメー等が言うとマジでやりそうでおっかねぇんだよ!」
「マジだからな」
「マジだもんね」
「あれを抹殺するのは構いませんが、殺るなら立夏くんのいないところでして下さいね」
「オメーもかよ!?」
………何か、余計収拾が付かなくなった気がする。
いや、皆の気持ちは有難いんだけどね。
「お前達がどんなにゴネようときっちり全額弁償してもらうぞ。俺も鬼じゃねぇから明日の0時までは待っててやるが、それ以上の猶予は認めない。お前が約束を守るって保証はどこにもねぇし、そもそもガキってだけで信用ならねぇからな。今すぐ金払えって言わないだけ有難いと思え」
「……ねぇ、コイツ、マジでムカつくからとっとと弁償しちゃおうよ。そんで消そうこの世から」
「そうだな。………ああ、俺だ。今から言うところに現金で500…「ちょ、ちょっと待ったぁあああ!!!」
そんな恐ろしい会話が聞こえて来たため咄嗟に会長と未空の腕にしがみついた。