歪んだ月が愛しくて2
「でも安心しました。てっきり恐極の件にお怒りの白夜叉殿が若を半殺しにしてるのかと思ったので…」
「いつもの発作ですよ。俺がここに着いた頃にはもう手が付けられない状態で…、そこでぶっ倒れてるのがその被害者です。だからこれは制裁じゃなくて愛の鞭ってわけ」
「っ、白夜叉殿の愛の鞭なら若は喜んでその身を捧げることでしょうね!何せ若にとって貴方は唯一無二の大切なお方ですから!勿論、貴方に憧れている者は若やナツだけでなく組員の中にも大勢おりまして、会長や師範なんかもう…っ」
「―――……、せぇ…」
不意に耳に届いたか細い声がヤエの覚醒を知らせた。
「若っ!?」
「あー…クソ、耳元でうっせぇんだよ。てか、シロの前で余計なことベラベラと喋ってんじゃねぇぞタコ」
意識を取り戻したヤエは松田さんの存在を認識すると、上半身だけを起こして地面に座ったまま松田さんの頭を殴って黙らせた。
殴られた松田さんはと言うと、頭を押さえながら「若!よくぞご無事で!」と嬉しそうに頬を緩ませていた。相変わらずヤエのこと大好きだね。
てか、無事ではないよね?
顔面ボロボロだし、俺とヤエの血で顔中血塗れだし。
「あ?テメーの目は節穴か?これのどこが無事なんだよタコ」
うん、ご尤も。
でも松田さんがハ……、スキンヘッドだからってタコって言うのはどうかと思う。
無意識に頭見ちゃうからやめてくれ。
ぱちっと、不機嫌そうなヤエと目が合った。
地面に座り込んだまま俺を見上げるヤエは先程までのニヤニヤした表情ではなく、罰が悪そうな不貞腐れた表情でポリポリと頭を掻く。
まるで親に怒られてる子供だな。
さっきまでの威勢はどこ行ったんだか。
「漸くお目覚めか、色男」
「……ああ」
ポンッと、そんなヤエの頭に手を乗せる。
「何であんなに機嫌悪かったんだよ?」
「……覚えてねぇ」
「ふーん…、じゃあ今は?」
「悪くはない」
つまり殴られて頭スッキリしたってことね。単純な奴。
「……でも、」
「ん?」