歪んだ月が愛しくて2
「ところで、貴様等が中のガキと同じ学校に通ってると言うことは、貴様等もあの聖楓学園の生徒ってことだな」
「そう、だけど…」
「そこの3年に恐極月と言う生徒が在籍しているはずだ」
「……ええ。ですが彼は1ヶ月ほど前に自主退学しています」
「ああ、そう言えばそんなことも言ってたな。……でも、いるんだろう?」
「仰ってる意味が分かりません」
「惚けても無駄だ。聖学に隠れてる“B2”が恐極月とその兵隊共を囲ってんのは調べが付いてる。まあ、俺的にはどうでもいいからいくらでも惚けてくれて構わないが、八重樫はそのことで是非とも話し合いの場を設けたいらしい」
「八重樫が…」
「貴様が皇の人間と言うことは聖学でもそれなりの立ち位置にいるんだろう。であれば恐極月が拘束されている理由も知っているんじゃないのか?」
「……その前に、何故八重樫組が恐極月を捜しているのですか?」
「何、あのこと知らないの?ついこの間うちの頭が恐極に乗り込んで暴れまくったって話」
「存じています。しかし何故あのような奇行に走ったのです?1人残らず惨殺したと聞きましたが…」
「そりゃ恐極が上の怒りを買ったからでしょう。白羊が八重樫のシマなのは知ってるよな。その白羊で恐極は薬をばら撒いてそれを自分んとこの資金源にしてたのが上にバレて粛清されたんだよ。よくある話さ」
「え、そんなことがあったの?」
「だとしたら恐極組が粛清されんのは仕方ねぇが…」
「だから唯一の生き残りである恐極月を引き渡せと?」
「まあ、そんなところ」
「……そちらの事情は分かりました。ですが、こちらも事情があって彼等を拘束しているので僕の一存で解放することは出来ません」
「へぇ…。じゃあ誰の許可を得ればこっちに引き渡してくれるんだ?」
スッと、後はそっちで処理しろと言う視線が俺と風魔に向けられる。
「……誰?」
「我が学園の最高権力者と、お捜しの人物を拘束した張本人ですよ」
その言葉に釣られてナツが俺等の前まで歩み寄る。
興味深そうにまじまじと俺等の顔を交互に見渡して「ああ、アンタ等が…」と漏らした。
「聖学のトップと言うことは神代の人間か?」
「ああ」
「で、そっちが“B2”の人間ってところか」
「“B2”の風魔頼稀だ」
「ハッ、丁度良い。今の話は聞いてたな。恐極月の身柄をこっちに…「「断る」」
タイミング良く発した言葉にナツは怪訝そうな表情を見せて「……仲良しかよ。キモ」と吐き捨てた。
ふざけんな。
こっちだって好きでハモったわけじゃねぇよ。
「断る理由は?」
「こっちにも事情があると言ったはずだ」
「その事情を聞いてんだけど?」
「答える義理はない」
「こっちは話したのに?」
「拒否することも出来たはずだ。それでもベラベラと語ってくれたのはそっちだろう」
「つまり、話せない理由があるってことか」
「解釈は自由だ」
この男がどこまで把握しているのかは知らないが、あの場にいなかった人間がここにいる限り安易に話すことは出来ない。
何より同級生達に知られて余計な心配を掛けることを立夏は望んでないだろうからな。