歪んだ月が愛しくて2
「てか、何でナッちゃんがこんなところにいんの?……ハッ、まさか友達がいないから1人で遊びに来たとか?だったら俺が一緒に遊んであ…「マジで殺してやろうか貴様?」
「冗談だよじょーだん、アメリカンジョークってやつじゃん。すぐ本気にしちゃうんだから。本当ナッちゃんは気が短くて扱いに困っちゃうわ。飼い主の顔が見てみたい」
「……アンタと遊んでる暇はない。用がなければとっとと帰れ」
「あるって言ったら?そしたら俺ともっと楽しくお喋りしてくれんの?」
「消えろ。仕事の邪魔をするな」
冗談でも照れ隠しでもなく、ナツは本気で高屋の存在を鬱陶しく思っているように見えた。
どうやら立夏と高屋を接触させたくないと思っているのは俺だけではないようだ。
高屋は「仕事…?」と呟いた後、俺達のことを見てにんまりと笑った。
「仕事ってことはヤエちゃん関係か。じゃあこっちの人達はそのお客さんってとこ?」
「アンタには関係ない」
「……本当に?」
「は?」
「さっきは初めましてだと思ったけど、よーく見たら知った顔があるようなないような…」
高屋はスッと目を細めてある一点を凝視したかと思えば、徐にナツから離れて視線の先に向かって足を進めた。
ピタッと、足が止まる。
「オニーサン、どっかで見たことあるんだけど、俺のこと知ってる?」
「、」
御幸陽嗣の前で立ち止まった高屋は、グッと顔を近付けてその顔を確認する。
まさか自分から近付いて来ると思わなかったのか、高屋の行動に御幸陽嗣はギョッと驚きの表情を隠し切れずにいた。
かつての同胞であり且つ己に制裁を与えた敵でもある自分に平然と話し掛ける高屋の図太さに、御幸陽嗣は度肝を抜かれたことだろう。
「……し、てる」
「あ、じゃあやっぱり初めましてじゃないんだ。ごめんねド忘れしちゃって。えっとー……どちら様だっけ?」
これがただ忘れてるだけならまだ可愛げがあったかもしれない。
「ちょ、直接話したのは、今日が初めでだ。……でも、俺は昔“鬼”にいた。だからお前のことも知ってる」
でも、そうじゃない。
「……ああ、そっち関係の人?じゃあアンタは俺を袋叩きにした連中の仲間ってことか」
「、」
これが高屋公平の底意地の悪さで、その本質なのだ。
「え、何それ…」
「ふ、袋叩きって、どういう…」
……重いな。
先程にも増して居心地が悪い。
御幸陽嗣を前にして無邪気に笑う高屋が、そんな空気を増長させていた。
「っ、俺は…、」
そこまで言って御幸陽嗣は言葉を閉ざした。
いや、掛ける言葉が見つからなかったのかもしれない。
「んー?なぁに?」
「………」
謝罪も、弁明も、今はもう何もかも意味がない。
嫌な記憶をぶり返させるだけ。
それならば自分が全部受け止めようと思っているのかもしれないが、それこそ無意味だ。
……もう、遅い。
何もかも手遅れなんだ。