歪んだ月が愛しくて2



「あ、思い出した。その髪色…、もしかして幹部の“ヨウ”さんじゃない?合ってる?」

「あ、ああ…」

「やっぱり。オニーサン…じゃなくてヨウさんってイケメンだから結構印象に残ってんだよね。髪色も派手だから遠目からでもよく見えるし、それにアカはシロの嫌いな色だから嫌でも目に付くしね」



「シロ…?」と、誰かが言う。



そんな中、高屋は「まあ、ヨウさんの色はアカってより朱色だけど」と興味が失せたように御幸陽嗣から距離を取った。



そして再びある一点を見据えて指を差した。



「それと、君のことも知ってるよ」

「……え、僕ですか?」

「そっ、君のこと。君が噂のアオイちゃんでしょう?史和の幼馴染みの」

「ふ、史くんのこと知ってるんですか!?」

「知ってるよ、史和とはオトモダチだからね」



「そうなんですか…」と納得する葵を余所に、俺は違和感を覚えた。



高屋と杜山が、友達?

白夜叉の側近と、その被害者と言われている人間が?



……可笑しい。

いや、不自然だ。



それに杜山の交友関係を調べた時、高屋との接点は出て来なかった。



どう言うことだ…?



「あ、あの…、失礼ですけどお名前は…」

「え?……ああっ、そう言えば自己紹介がまだだったっけ。顔見知りがいたからすっかり忘れてた、ごめんごめん。俺の名前は高屋公平。南城高校の2年でピチピチの17歳だよ、よろしくねん」

「高屋さん、ですね。僕は…「え?高屋公平?」



刹那、未空の声が葵の言葉を遮った。



「それって、」

「お前が…」

「ちょっと待って下さい。その名前…、もしかして貴方があの…」

「あの?あのってなーに?その続きスゲー気になるんだけど」

「っ、……貴方が元“鬼”の、白夜叉の側近なんですか?」



そんな様々な疑問に答えるように、高屋は笑った。

純真で、子供のような笑みで。



「そうだよ」



サラッと、爆弾を投下した。

いや、そもそもこの男の存在自体が爆弾みたいなものか。



簡単に肯定された事実はとんでもなく重いもので、葵の心を引き裂くには十分過ぎる衝撃だった。



「あ、なたが…っ」



目の前には大切な幼馴染みを傷付けたかもしれない、仇の側近が2人。
この状況に葵は自身の気持ちを落ち着かせるように拳を固く握り締めた。
他の連中も葵ほどではないとは言え、ナツに続き2人目の側近の登場に驚きを隠せずにいた。
それと対極するようにこの状況を端から見ていた店長を含む野次馬達は羨望の眼差しで俺達の様子を静かに傍観していた。



「あ、そっか。アオイちゃんはシロのこと憎んでるんだっけ?でも史和を襲ったのはシロじゃないから安心して」

「……そんなの、信じられません」

「まあ、そうなるわな。俺はシロ側の人間だからアオイちゃんが俺の言葉を信じられないのは仕方ねぇよ。でも史和も言ってたでしょう、犯人は白夜叉じゃないって。史和の言葉は信じてあげれば?」

「っ、それは、史くんが、白夜叉に憧れてるから…」

「だからシロを庇ってるって?流石にそこまで盲目してないと思うけど……まあいっか。どうせアオイちゃんは俺が何言っても信じてくれないだろうから今は反論も弁明もしねぇよ。それに当事者の口から直接聞いた方が説得力あると思うしね」

「当事者?」

「本当の犯人と、偽物に仕立てられた犯人。アオイちゃんはどっちの言葉を信じるのかな?」

「、」

「どう言うことだ?」



その意味深な発言にすかさず反応したのは神代会長だった。



「うわっ、メッチャ美人じゃん。しかも金髪。身長高いからオニーサン…でいいんだよね?こっちの人じゃないんだよね?」

「あ゛?」

「地声低っ。てことは男か、ざーんねん」

「……真面目に答えろ」

「俺だって真面目に聞いてんだよ。オニーサンがもし女なら俺にもワンチャンあるかもし…「ねぇからとっとと答えろ」



「ちぇ、美人とお近付きになれるチャンスだったのに…」と、高屋は本気で残念そうな顔をしていた。



いや、ねぇだろう。

寧ろほんの少しでも可能性があると思ってたことがスゲーよ。



「じゃあ名前教えてよ。そしたらちゃんと答えてあげるから」

「……神代尊だ」

「ミコトちゃんか。可愛いなま…「神代だ」



(本当、恐ろしい奴だな…)


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