歪んだ月が愛しくて2
「僕はね、何も慈善活動がしたくて君に構っているわけじゃない。君のためと口では言いながらも結局は自分のために君に付き纏っているに過ぎない」
足音が聞こえる。
アゲハは俺の隣に並ぶと視線を合わせることなく遠くを見つめた。
「君の存在は、僕にとって光だ」
光?
「いや、僕だけじゃない。闇に生きる者なら一度は君と言う光に焦がれたはずだ。僕も……一度は見失い掛けていたものを君に出会えたことで再び取り戻すことが出来た。君には本当に感謝しているんだ」
「………」
感謝なんて有り得ない。
恨まれることはあっても感謝される覚えはない。
「それなのに犠牲?……冗談じゃない」
ガシャンと、アゲハはフェンスに拳を打ち付けた。
「僕が君に構うのも、君を優先するのも、そんなのは犠牲で何でもない。僕は僕のやりたいようにやってるだけだ」
「、」
グレーとエメラルドが交差する。
その鋭い眼光から目を逸らすことが出来なかった。
「それでも君がそれを犠牲と言うのならそんなものは痛くも痒くもない。僕にとっては犠牲と呼ぶに相応しくないよ」
アゲハから漂う威圧感に言葉を失くした。
「これは僕のエゴだ。誰に何と言われようと、君にウザがられようとこの生き方を変えるつもりはないよ」
ああ、もう何を言っても無駄な気がする。
きっとアゲハは俺の言葉を聞き入れてはくれない。
そう思うくらいアゲハの言葉には力があった。
ゆっくりと、視線を下げて溜息を吐く。
……もう、ダメだ。どうしようもない。
これでは忠告したって無意味じゃないか。
こんなにも足掻いたのにどうやら時間の無駄だったらしい。