歪んだ月が愛しくて2



「Fantastic!!」



……………は?

ふぁ、ふぁん…?



「ああ、あのツンツンな駒鳥が僕の腕の中にこんなにも大人しく収まっているなんてっ!ああ、何て小さくて愛らしいんだ!早速この喜びを頼稀と共有しなくては!」

「させるかボケェエエエ!!」

「ぐはっ!」



このKY野郎め!

雰囲気ぶち壊しだな!



「おい、いい加減離れろや。マジで暑苦しいわ」

「ふっふふっ、流石駒鳥。お約束を忘れないね」

「いつから約束になったんだよ」



黙ってたら超が付くほどの美形なのに口を開けば残念としか言いようがない。



でも拒絶出来ない。

……いや、したくない。

それはきっと俺の中でアゲハの存在が日に日に大きくなっているからだ。



でもやっぱり少しくらいは空気を読んでもらわないと困る。
お陰で羞恥心やら怒りやらのせいで感傷なんて吹っ飛んでしまった。
溜まっていたもの吐き出すように深い溜息を吐くと地面に片膝を付いたままのアゲハが涙目になりながら鳩尾を擦っていたのが見えた。



「え、そんなに痛かった?」



そんなに力入れたつもりはなかったのに。



「心配無用さ。これも愛のムチと言うものだね」

「いや、違ぇから」



ムチはムチでもアメとムチの方だわ。

……あれ?それも違うか?



そっと、アゲハの前に手を差し出す。



「ん?」

「……掴まれば」

「……優しいね、駒鳥は」



アゲハの手が俺の手に重なる。
片手でアゲハを引き起こすと当然のように目の前にいるのはアゲハで。本来の身長差もありアゲハの視線が俺の旋毛辺りに感じる。



「いつかその優しさが君自身の首を締めてしまわないか…、僕はそれが心配だよ」

「俺は優しくねぇよ。寧ろ…」



その逆。



「捨てられない想いがあってもいいじゃないか」

「え、」

「君はこれまでの行いから自分のことを残酷な人間だと思っている。違うかい?」

「……その通りだろう」



現に俺には捨てられないものがある。
仲間も、想いも、過去も、そして今さえも。
宙ぶらりんな俺の感情は他人にとって毒でしかない。



自分でも分かってる。

だから一度は大切なものを捨てようとした。



でも…、


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