歪んだ月が愛しくて2



『自分を否定するってことは自分を信じてくれている奴を否定することと同じなんだよ』



もう何年も前に尊に言われた言葉。
きっと俺は死ぬまでその言葉を忘れることはないだろう。



尊は知らないだろうな。俺がその言葉にどれほど救われて来たか。



今の俺がいるのは尊のお陰なんだよ。

だって尊は俺の光なんだから。



「はぁ…」



すると頼稀は溜息を吐いてシンクの縁に手を付いた。



「……似てるな」

「似てる?」

「まさか兄弟揃って説教されるとはな」

「え、兄弟って…」



……まさか。



「立夏のことで俺に説教垂れる奴なんて1人しかいねぇだろう」



アイツかぁぁああああ!!!

何それ初耳なんだけど!?いつの間に頼稀に説教なんてしてたんだよ!?



「……まあ、言われたことは真摯に受け止めるさ。お前に言われたことも含めてな」



どこか吹っ切れたような清々しい表情で頼稀は目を細めてフッとその口元に笑みを浮かべた。



ああ、それそれ。

その顔はいつもの頼稀だ。

もう大丈夫そうだね。



「……戻った?」

「戻った」

「じゃあリビング行く?」

「その前に戻ったついで教えてやるよ」

「何を?」

「さっきはお前に八つ当たりしてああ言ったけど本当は感謝してんだ。今の立夏が笑っているのはお前達のお陰だからな」

「え、でもさっきは…」

「確かに立夏の闇は消えない。今もああやって夢に出ては独りで苦しんでいる。でもアイツが普通でいられるのはお前達が立夏の傍にいてくれるからだ。アイツも心のどこかでそれに気付いている。そうじゃなかったら神代会長に手を伸ばしたりしねぇよ」

「リカが…。ヤバいっ、スゲー嬉しい!」

「テンション高ぇよ」

「うん!テンション上がった!」

「現金な奴」

「じゃ、じゃあさ!これからもリカと一緒にいてもいい?好きでいてもいい?」

「別に俺が決めることじゃねぇよ。立夏に聞け」

「いや、それは照れる!」

「何でだよ」


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