歪んだ月が愛しくて2
―――許さない。
その言葉に、嫉妬や羨望がなかったとは言い切れない。寧ろ、あの時の僕にはそれしかなかったかもしれない。
ああ、本当に僕がやっていることはアイツ等と一緒じゃないか。
自分善がりで他人の気持ちなんて一切考えない。そんな親衛隊の連中と一緒にされたくなくて抜けたはずなのに…。
藤岡のことを知りたいと思ったのはそれからだった。
だから桂木と我妻に呼び出された時も仙堂や風魔を押し退けてまで自ら出向いた。
『な、何言ってんの!バカじゃないの!僕はただクラスの連中を大人しくさせるために…っ!それにさっきは君を助ける形になったけど、僕だって本当はアイツ等と同じかもしれないじゃん!』
『違うよ』
『君に僕の何が分かるんだよ!?』
『確かにみっちゃんとちゃんと話したのは今日が初めてだけど、それでも今日だけで分かったことは沢山あったよ。口が悪くて高飛車な女王様で、俺のこと嫌いなくせに理不尽なことが我慢出来なくて、曲がったことが大嫌いなC組の学級委員長』
『誰がそんな…っ』
『だからみっちゃんはアイツ等と一緒なんかじゃない。俺に言いたいことがあったら直接言ってくれるだろう、この前みたいにさ』
今ではみっちゃん呼びも許して、自分から友達になれとまで言った。
でも仕方ない。
だって、そう思ってしまったのだから。
ああ、これが本来の藤岡立夏なのか。
藤岡の目を見て、言葉を交わして、分かった。
仙堂が変わったわけも、風魔が過保護過ぎるわけも、尊様が藤岡を大切に想っているわけも。
放って置けないわけだ。
あんな表情で、あんな声で叫ばれたら。
藤岡は他人から向けられる感情を素直に受け止めることが出来ない不器用な奴だと思う。
あんなに皆から必要とされて愛されていると言うのに、本人にはその自覚が全くない。……いや、自らストッパーを掛けているようにも見える。
過去に何があったのか、藤岡が何を背負っているのか、僕には分からない。
でも、知りたいと思った。
放って置けないと思った。
バカみたいに笑っていて欲しいと、柄にもなく願ってしまったから。
(僕も十分ミーハーだな…)