歪んだ月が愛しくて2



「ちょっと何あれ?いくら生徒会役員でもあの態度はなくない?」

「九條院様に失礼だよ」

「何様のつもりだよアイツ」

「尊様のお気に入りだからって調子乗り過ぎ」

「どうせあんな性格ブスすぐに飽きて捨てられるよ」

「確かに。覇王様が飽きてポイしたらイジメてやろうよ」

「生意気な後輩にはお仕置きしなくちゃね」





幼稚な会話に呆れて物が言えない。
性格ブスって確実に自分達のことなのに、当の本人は全く気付いていないなんて笑える。
しかも尊様が藤岡に飽きるって都合の良い夢見過ぎでしょう。
本当外見でしか人を判断出来ない奴って可哀想だと思うよ、頭悪過ぎて。
お仕置きなんてした日には自分達の人生がお先真っ暗だってことにまるで気付いていない。





「……スゲーな、藤岡って」

「ああ。あの九條院に向かって怒鳴るなんて勇気あるよな」

「しかも藤岡って覇王のお気に入りなんだろう?」

「何者だアイツ?覇王並みの家柄とか?」

「あ、だから九條院にいつも塩対応なのか」

「分かんねぇけど、藤岡って………怒った顔、ヤバくね?」

「ああ、何かこう色気がヤバい」

「何であんな昭和眼鏡掛けてんのかな、勿体ねぇ」

「外したら絶対綺麗だよな、あれ」

「一度でいいから拝んでみてぇな」

「で、あわよくば」

「「お相手願いたいっ!!」」





こっちも別の意味でお先真っ暗になりそうだけど。





バカには分からない。藤岡に手を出したらどうなるか。
お先真っ暗なんて可愛い表現では済まされない。
社会的制裁は勿論のこと、二度と平穏な生活を送ることは出来ないだろう。
ましてやその制裁を与えるのが尊様であれば尚のこと。
それくらい尊様にとって藤岡の存在は大きいのだろう。



尊様だけじゃない。
仙堂も、風魔も、九條院先輩にとっても、藤岡の存在はなくてはならないものとなっている。
あの(色んな意味で問題児の)獣共の手綱を引いてくれるのは有り難いけど、僕だったらあんな珍獣共に好かれたくはないな。





「ご愁傷様」





今も藤岡に対する嫉妬や羨望が完全にないとは言い切れない。
でもお人好しで他人優先の藤岡だから愛称で呼ぶことも許したし、友達になりたいとも思ったし、尊様のことだって…。
まあ、本人には絶対言ってやらないけどね。





「あの1年、九條院様になんてことを…っ」





(ああ、ここにもか…)





させないよ。



何たって珍獣共の手綱を引けるのは、藤岡だけなんだからね。


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