歪んだ月が愛しくて2
予兆
立夏Side
「え、アゲハが会議をサボった?」
寮長会議のため少し遅れて生徒会室に現れた九澄先輩は、俺を視界に入れるやアゲハに対する苦言を呈した。
「へー、アゲハでもサボることあるんだ。時間にきっちりしてそうなタイプなのに」
「そこが唯一の取り柄なのにな」
「唯一かよ。アゲハかわいそ」
「他に探す気ねぇだけだろう」
「まあ、来たには来たんですが…」
「何々?アゲハの奴、また九ちゃんのこと困らせたの?」
「それはいつものことです」
あ、いつもなんだ。
「珍しいじゃん、九澄がアイツのこと気にするなんてよ。何かあったわけ?」
「彼自身に興味はありません。僕が気になったのは彼がよりにもよって我孫子くんと一緒に戻って来たからです」
「我孫子と?」
俺は九澄先輩の言葉に違和感を覚えた。
いや、違和感よりももっと明確な疑惑のようなものを感じた。
だって我孫子は俺達よりも先に会議室を出た。その後、俺とアゲハは屋上で少し話し込んでアゲハが先に屋上から出て行ったから、アゲハと我孫子が合流するとしたら…。
(……まさか)
「立夏」
不意に会長が俺の名前を呼ぶ。
「知ってんのか?我孫子のこと」
「……え、」
あ、しまった。
「りっちゃん、我孫子と知り合いなの?」
「さっきは秘密と言っていましたが、彼と何かあったんですか?」
「えっとー…」
我孫子の名前に会長だけでなく陽嗣先輩と九澄先輩までもが反応した。
一斉に質問攻めに合う俺は我孫子と知り合った経緯をどう説明したらいいか考えていた。
「話せ」
不思議なのは…、
「……何怒ってんの?」
「いいから」
会長が怒っている理由だ。