歪んだ月が愛しくて2
「―――つまり、お前は転入初日にトイレで我孫子に絡まれて襲われそうになったところを未空と風魔に助けられた……ってことか?」
「……はい」
現在絶賛お説教の真っ最中。
ソファーの上に正座させられている俺は小姑のようにネチネチ攻撃全開の会長と目を合わせることが出来ないでいた。
「で?」
「で?」
何が、で?
「絡まれて嫌な目に遭ったくせに何でお前はそれ以降も我孫子と親しくしてんだって聞いてんだよ」
「それは、また絡まれて…」
てか親しくしてねぇし。
そこは断固否定するわ。
「お前なら奴を跳ね除けることくらい造作もねぇだろうが」
「それは、そうだけど…」
「………」
「……何?」
「何かあったら言えって、言ったはずだ」
「っ、それは、まだ生徒会に入る前のことだったから…」
「関係ねぇよ。何かあったら必ず言え。生徒会に入る前のことでも、ここに来る前のことでもだ」
会長はいつも真っ直ぐに俺の目を見る。
この呪われた目を。
「返事」
「……善処、します」
だから俺は会長から目を逸らす。
まだ知られていない本性を、闇を、想いを、灰色のベールの中に隠すように。
「立夏」
「なに…っ」
名前を呼ばれて顔を上げようとした時、会長の指が俺の額を弾いた。
「な、何っ!?俺なんかした!?」
弾かれたように上を向く。
そこには会長の無駄に綺麗な顔が至近距離にあって驚いた。
「俺を見ろ」
「、」
ゴクッと、息を飲む。
「俺の目を見て、ちゃんと向き合え」
顔に熱が集中する。
……この人、絶対分かってない。
その無駄に綺麗な顔でそんな小っ恥ずかしい台詞を真顔で言われて何とも思わないわけがない。
少なくとも俺は無理だ。免疫なんてあるわけがない。
フイッと、込み上げる何かを誤魔化すように視線を逸らした。
「テメー、言ってるそばから…」
アンタの顔が近いからだよ!
そう言ってやろうと思った時、会長の大きな手が俺の顎を鷲掴みにして強引に引き寄せた。
「返事は?」
「………」
「へ・ん・じ」
「……ふぁい」
渋々…、本当に渋々承諾すると、会長は満足したように「始めからそう言え」と言って俺の顎から手を離した。
「……バカ力」
「聞こえてるぞ」
態とだよ。