歪んだ月が愛しくて2
「ああ、嫌だ嫌だ。虚しい野郎同士でイチャイチャしやがって見せつけてんじゃねぇよ」
「完全に2人の世界に入り込んでましたね」
「いくらみーこでもそれ以上リカに近付いたらダメだかんな!」
3人の言葉に再び羞恥心が煽られる。
咄嗟にソファーから立ち上がって会長と距離を取る。
「ち、近い!離れろ!」
「チッ」
「何で舌打ち!?俺また何かやった!?」
「いいんですよ、立夏くんは気にしないで」
「2人っきりの時間はまた今度な〜」
「今度なんて許しません!」
「お前は俺の父親か」
「パパ〜♡」
「死ね」
「逆ですよ、未空」
パシッと、会長は未空の頭を叩く。
その傍らで陽嗣先輩はソファーから身を乗り出して興味深々に尋ねて来た。
「そもそも我孫子は何て言ってりっちゃんに近付いて来たわけ?」
「……戻しますね」
「だって気になんだもん」
ぶりっ子すんな。
気持ち悪い。
「で、なーんて口説かれたの?」
「え、リカ口説かれたの!?誰に!?何て!?」
「未空、落ち着いて下さい。ただの比喩ですから」
「ひゆ?」
「黙って聞いてろ」
『なあ、俺と組まねぇか?』
「……別に」
我孫子は覇王を拒絶した俺をGDに勧誘した。
転入当初はその行為がどれほど命知らずなことか理解してなかったから不思議で仕方なかったが、今になって思えば何て愚かで安易なことをしたと反省している。
我孫子が俺に目を付けたのも分かる気がする。
ただ安易に懐に飛び込んでやるほど俺は愚かじゃないんでね。
「大した口説き文句じゃなかったよ」
結果的に俺はGDも拒絶した。
そして覇王と共にいることを選んで今ここにいる。
過ぎたことを話しても仕方ないと自分に言い聞かせて胸に掬う罪悪感から目を逸らした。
「そいつは益々気になるね」
酷薄な笑み。
……ああ、この人は心底疑り深いな。