歪んだ月が愛しくて2
「兎に角、我孫子があの時の奴ならリカはもう近付いちゃダメだよ!」
「……自分から近付いた覚えはない」
「だとしてもダメ!」
「何で?」
「だって我孫子はリカに酷いことしようとした奴だよ!そんな奴に俺の可愛いリカを任せられないよ!」
「任せるって…」
「そもそもりっちゃんは猿のじゃねぇけどな」
「立夏くんは皆のものですよ」
「違うよ!リカは俺のなの!俺だけのリカ!」
「はいはい」
「やったー!」
俺の相槌を了承と受け取った未空は正面から俺に抱き付いて来た。
そんな未空の背中に腕を回しポンポンと背中を軽く叩いてあやしていると会長が俺の腕を未空から剥ぎ取った。
「おい、納得してんじゃねぇよ」
「だってこうなった時の未空はしつこいから」
「しつこくないよ!それだけリカのことが大好きなの!」
「はいはい」
「おい」
「まるで猛獣使いですね」
「それを言うなら猿使いだろう」
「誰が猿だ!」
「お前しかいねぇだろうが」
「いっだー!暴力反対!」
「煩ぇ。それ以上喚くならもう一発食らわすぞ」
「助けてリカ!みーこが殴る!」
「それで呼ぶんじゃねぇバカ猿」
「ギャー!リカー!」
未空は俺の後ろに隠れるやすぐに会長に捕まって引き離された。
煩いのがいなくなって清々した俺は自分で淹れたコーヒーを口に含んで小休止。
隣では九澄先輩がカタカタとノートパソコンを操作して何やら仕事をしていた。
「仲良いですね」
「ですね」
「立夏くんもですよ」
「俺?」
九澄先輩はノートパソコンから顔を上げると俺を視界に入れて意味深に微笑んだ。
「立夏くんは未空のことがよく分かるんですね」
「………」
それは何気ない言葉だった。
いつもなら適当に笑って流せるような他愛もない会話の一部。
でも出来なかった。
そして一つの事実にぶち当たる。
「……別に、何となくですよ」
それは今の俺にとって少し残酷な言葉だった。