歪んだ月が愛しくて2



「他には何に出るんですか?」

「借り物だよね?俺はパン食いも出るけど」

「人数合わせでね」

「へー、りっちゃんって足速いんだ」

「別に速くないですよ。皆に押し切られて仕方なく」

「期待されているからこそですよ。頑張って下さいね」

「そんなこと言われても…」



九澄先輩の言葉に苦笑することしか出来なかった。
今更トレーニングしたところで劇的に足が速くなるわけでもないのに何をどう頑張っていいのか分からない。



「何だ、また怖気付いたのか?」



すると会長はいつもの如く喧嘩口調で突っ掛かって来た。



「……別に怖気付いてないよ。ただ俺なんかで本当にいいのかなって思っただけ」

「お前がいいから選ばれたんだろう」

「え、」



俺が、いいから?



「そうだよ!リカだからアンカーに選ばれたんだよ!」

「でもアンカーなんて…」



正直そんな責任重大なことを押し付けないで欲しいと言うのが本音だ。
その期待に応えられなかったら…、そう考えただけで不安になる。



「でもじゃねぇ。お前がいいって言ってんだからそれ以上なんてねぇんだよ。いい加減分かれバカ」

「………」



ムクムクと、歯痒い気持ちが込み上げる。



まただ。

何で会長はいつも…、



「……毒舌」

「あ?」

「口が悪いって言ったの。もう少し優しく言えないわけ?」

「優しくされたいのか?」

「まさか」



本当は優しさなんて求めてない。

建前も詭弁もいらない。

ただはっきり言って欲しかった。あの時のように。



『偶には弱音吐いたって我儘言ったっていい。泣きたい時には泣けばいいんだ。幻滅なんかしねぇよ』



……ダメだ。

どんどん欲張りになってる。



そんなの、絶対にダメなのに。


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