歪んだ月が愛しくて2



会長はいつも欲しい言葉を与えてくれる。



『大丈夫だ』



その言葉はまるで過去から続く忌まわしい因縁を全て断ち切ってくれる魔法のようだった。



「口が悪いのはお前も一緒だろうが」

「会長よりはマシだと思うけど」



都合が良い考えに反吐が出る。



でも救われていた。

勇気をもらえた気がしたんだ。



『―――幻滅なんかしねぇよ』



それだけで十分だった。

これ以上望んではいけない。

それなのに日に日に欲張りになっていく自分がいた。



「言ってろ」



醜い本性も、弱い心も知られたくない。

足手纏いなんて思われたくない。



「それはこっちの台詞」



あの太陽の傍にいるためにも。



「それより3人は何に出るんですか?」

「あー…気分」

「相変わらずやる気ないな」

「陽嗣がやる気になった時なんてありましたっけ?」

「記憶にない」

「……つまり出る気ないんですね」

「まあ、いつもならな。でもりっちゃんがリレーに出るって言うなら俺も頑張っちゃおうかな〜」

「俺が出なくても頑張って下さいよ」

「じゃあ頑張るからご褒美ちょーだいよ」

「ご褒美?」

「そ、ご褒美。何くれる?」

「何って…」



黙っていれば息を飲むほどの綺麗な顔が俺との距離を縮めてそんなバカなことを尋ねて来る。
すると俺と陽嗣先輩の間に未空が強引に割って入って来た。



「なーにがご褒美だよ!どうせリカにあらぬことさせようとしてるんだろう!」

「あははっ、正解」

「見え見えなんだよ!リカのご褒美は俺のものだ!」



……ん?



「お前こそ魂胆丸見えだぜ。りっちゃんのチューが欲しかったら俺を倒してからにしな」

「……は?」

「上等!だったらリレーで決着付けてやるよ!」

「ハッ、望むところだ!」



いや、勝手に望むなよ。


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