歪んだ月が愛しくて2



尊Side





言いたいことだけ言って生徒会室を飛び出した立夏の後ろ姿に思わず口元が緩む。



「あーあ、リカに逃げられちゃったじゃん。2人のせいだからな」

「人のせいにしてんじゃねぇよ」

「そうそう。お前が横からチャチャ入れなかったら今頃ご褒美の確約取れてたのによ」

「まだ狙ってんのかよ!?」

「そりゃな。オメー等だけってのも何か癪だし」

「……リカのこと何とも思ってないくせにそう言う時だけちょっかい掛けて来んなよな」

「さあ、どうだろうな」

「恍けんな!」

「ハッ、悔しかったらとっととりっちゃんをものにしてみろよ」

「それが出来れば苦労しねぇんだよ!」



未空と陽嗣は立夏がいなくなった後も喧しい。
そんな2人に手元にあった灰皿を投げ付けて強制的に大人しくさせてやろうとしたが、九澄は見計らったように灰皿の上に手を乗せた。



「誰が掃除すると思ってるんですか?」

「アイツ等にやらせろ」

「するわけないでしょうあの2人が。その気に入らないことがあるとすぐ物に当たる癖、どうにかなりませんか?」

「文句があるなら元凶に言え」

「貴方にも問題はあると思いますけど」

「問題?」

「2人相手に大人気ないって言ってるんですよ。特に立夏くんが絡むとね」

「ハッ、言ってろ」

「自覚がないとは言わせませんよ。立夏くんを庇って大怪我までして、ましてや一緒に飛び降りるなんて…。腕の骨折だってまだ完治していないくせに」

「……余計なことは言うな」

「分かってますよ。貴方がやったことは決して間違いじゃない。以前の貴方なら絶対にあんなことはしませんでしたが立夏くんを守るために貴方だからこそ出来たことだと…」

「アイツのためじゃない」



九澄の言いたいことは分かっている。

だからこそそれ以上は言わせなかった。



「俺は自分のためにああなることを選んだ」



恐極の鉄パイプを受けたことも、村雨に突き飛ばされた立夏と一緒に階段から落ちたことも、全部自分のためにしたことだ。
誰のためでもない。ましてや誰かのせいでもない。



「お前もアイツにそう言ってただろうが」

「……貴方らしいですね。“立夏くんのため”と言えば“立夏くんのせい”で怪我をしたことになる。そうなれば立夏くんは余計気に病み周囲の立夏くんに対する反感は増すばかり。だから貴方は本当の意味で立夏くんを守ろうとしているんですね」

「解釈はお前の自由だ」

「あの時、僕と立夏くんの会話を聞いていた貴方は一切否定しなかった。それだけで十分ですよ」

「否定する必要がなかったからな」

「だからって自分のところの主治医を脅すのはどうかと思いますけどね」

「お前も人のこと言えねぇだろうが」


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