歪んだ月が愛しくて2
「何が人のこと言えないの?」
未空は少しの衝撃と共に俺の首に両腕を回して飛び付いて来た。
「……邪魔だ。退け」
「何だよ邪魔って。ここが俺の定位置じゃんか」
「いつからお前の定位置になった?ガキじゃねぇんだからとっとと離れろ」
「いいじゃんケチ」
「誰がケチだ」
「いいじゃねぇの。ガキのお守りはお父さんの役目だろう?」
「そうだ、そうだ」
「お前がえばるな」
「痛ってー!また叩いたな!これ以上バカになったらどうしてくれるんだよ!」
「どうもしねぇよ、今まで通りだ。いいから退け」
「だからって殴ることねぇじゃん!」
そう言って未空は頭を擦りながら俺を睨み付ける。
「未空、立夏くんを追わなくていいのですか?」
「んー…追い掛けたいのは山々なんだけど今行ったらどっちにしても逃げられるから行かなーい」
「くくっ、しつこく迫ってりっちゃんに嫌われねぇようにな」
「嫌われたらヨージのせいだかんな!」
「何でだよ。人のせいにすんじゃねぇよ」
「まあ、最近は親衛隊も大人しくなったようですし大丈夫だとは思いますが…」
「例の手紙ももう送られて来てないって」
「りっちゃんがそう言ったのか?」
「うん。それと頼稀にもこっそり聞いたから間違いないと思うよ」
「ふーん…」
「だからって油断すんじゃねぇぞ」
「しないよ。もうリカをあんな危険な目に合わせるつもりはないから…」
未空の顔はいつになく真剣だった。
いつまでもガキだと思っていたがそうでもないらしい。
「白樺くんの方はどうです?」
「知らねぇ。集会にも顔出してなかったし」
「ふーん…。リカに言われたことちゃんと覚えてたんだ?」
「……まあな。りっちゃんに危ない思いさせたのは事実だし火種を作ったのも俺だ。そのくせりっちゃんにあんなこと言われちゃ気にしねぇわけにはいかねぇだろう」
「貴方にしては良い心掛けですね」
「俺にしてはってどう言う意味よ?」
「そのまんまじゃん」
親衛隊の動きは驚くほどピタッと止んだ。
余程公認にしたのが効いたのか、それとも他に何か企んでいるのか。
どちらにせよ警戒を緩めるつもりはない。
恐極を追い出したとは言え幹部はまだ3人も残っている。
それに村雨のように逆恨みする者がいないとも限らないからな。