歪んだ月が愛しくて2
「白樺と言えばさ、この前の騒ぎの時リカと一緒にいたんだよね」
「そう言えば…」
「あの時はリカのことで手一杯だったからスルーしちゃったけど、あのままにして良かったの?」
そう言って未空は俺の顔を覗き込む。
「確か…、九條院も一緒だったな」
嫌な光景が脳裏に過ぎる。
立夏に対して執拗に絡む九條院は無視出来ない存在だ。
俺の考えが正しければ九條院は恐らく…。
力もなく何の後ろ盾もない白樺とはわけが違う。
「あの状況で白樺くんを有害と見做すか無害と見做すか判断は難しかったでしょう。何れ立夏くんにも確かめてみましょう。問題なのは…」
「九條院か」
九澄も陽嗣も分かっていた。
今問題視しなければならないのは白樺ではなく九條院だと言うことに。
「アゲハ?何で?」
「あの騒ぎで誰も怪我人を出さずに済んだのは間違いなく立夏くんのお陰でしょう。ただ立夏くんも言っていましたが風魔くんと九條院くんが立夏くんに手を貸したのは事実です。僕にはそれがどうも腑に落ちません」
「それは偶々じゃないの?傍にいたから3人で協力して…」
「出来過ぎてんのさ」
陽嗣は未空の言葉を遮り九澄の言葉を代弁する。
「出来過ぎって、何が?」
「風魔は九條院の従者なんだよ。だから風魔は九條院にベッタリだし新歓の時に九條院に逆らえなかったのもそのせいだ。だから2人が一緒にいんのは当然で何ら疑問に思うことはねぇが何でそこにりっちゃんが加わんだ?」
「だから偶々なんじゃ…」
「それが出来過ぎなんだよ。それに今回の騒ぎでりっちゃんは風魔と九條院を“巻き込んだ”って言ってた。つまりそれはあの2人がりっちゃんの指示に従ってあの場を納めたってことになる。そもそも何でりっちゃんは九條院を頼ったんだ?ただの上級生の九條院を。風魔なら分かる。だってアイツは“B2”の幹部だからな、喧嘩なんてお手の物だろうよ。でも九條院は?由緒正しき七名家の次期当主のアイツが誰が喧嘩出来るなんて思う?初めから知ってなきゃ普通頼んねぇだろう」
「初めから、て…」
「そう考えりゃ風魔だって可笑しいよな。だって風魔は九條院を護衛する立場。そんなアイツが九條院を巻き込むことを許すと思うか?思わねぇだろう?だとしたらりっちゃんは何で九條院を巻き込んだのか?何でそれを風魔が許したのか?そうなりゃ答えは一つしか…「待った」
今度は未空が遮った。
その顔付きはどこか神妙としていた。
「……疑ってんの?」
それは何に対してか、未空は口に出して言わなかった。
でも俺等は分かっていた。
その言葉が誰を指しているのか。