歪んだ月が愛しくて2
Prrr…
不意に電話の着信音が鳴る。
音の出所は……俺か?
「みーこ電話」
「早く出ねぇと切れちまうぜ」
「誰からですか?」
「……さあな」
「え、さあって…」
ディスプレイに映る「非通知」の文字に眉を顰めながら通話を許可してスマートフォンを耳に当てる。
「……誰だ」
『やだ、こっわーい』
「、」
その声に聞き覚えがあった。
この女特有の甲高い声は、まさか…。
『あら、もしかしてあたしのこと忘れちゃった?昔の女を忘れるなんてちょっと酷いんじゃない?』
「……何故この番号を知ってる?どうやって嗅ぎ付けた?」
『質問が多いわね。これだからせっかちさんは困るわ』
「用件がねぇなら切るぞ」
『あ、ちょっと待って、貴方に話したいことがあるのよ』
「俺にはない」
『でも聞かないと後悔するわよ』
その言葉に思わず手を止めた。
これが女の常套句だと分かっていても聞かなければならないと俺の直感がそう訴えていた。
「……言え」
『あーら、そんな口利いてもいいのかしら?』
「何だと?」
『またイジメちゃうわよ、貴方の可愛い弟くん』
「おい」
『うふふ、冗談よ。もうすぐ怒るんだから。昔はもっと可愛げがあったのにいつからこんなに捻くれちゃったのかしらね』
「………」
女の目的が分からない。
俺を挑発したいだけか?それとも他に何か企みがあるのか?
どちらにせよ女が言う「話したいこと」が良い話じゃないのは確かだ。
『単刀直入に言うわ。あたし、貴方と寄りを戻したいの』
「あ?」
寄りを戻すだと?
……バカな。
『まあ、それについてはほぼ決定事項なんだけどね』
「……どっちの差し金だ?」
『さあ、どっちでしょうね』
「くだらねぇ。そんなこと言うために電話して来たなら切るぞ」
『言ったでしょう、後悔するって。近いうちに会いに行くわ。あの子にも挨拶しなくちゃね。それに―――』
「、」
予想外の言葉に不意を突かれ反応することが出来なかった。
ツーツーと、虚しい機械音だけが耳に残る。