歪んだ月が愛しくて2
生温かい風が頬を撫でる。
ザアア…と、葉の揺れる音が聞こえる。
リカと出会ってから季節は春から夏へと変わろうとしていた。
まだたった数ヶ月しか一緒に過ごしていないけど、俺の中でリカの存在は日に日に大きくなっていた。
俺のリカに対する気持ちが友情から明確なものに変わったように、きっと頼稀の中でも変わったものがあったんだ。
それを暴くつもりは毛頭ない。
誰にでも言いたくないことはあるし、俺もまだ話せていないことがある。
それにこれ以上は追い詰めたくなかった。
自分から仕掛けたくせに何言ってんだって思われるかもしれないけど。
「……これで満足か」
「……うん。ごめんね、言いたくないこと言わせちゃって」
「幻滅したか?」
「まさか」
俺の言葉に頼稀は驚いたように顔を上げた。
「は、」
「するわけないよ。俺だってリカに対する気持ちは毎日変わるもん。それと一緒でしょう」
「………」
「あのさ、頼稀が何を気にしてそんな辛そうな顔してるのか分からないけど、それって普通のことじゃん。別に誤魔化す必要ないと思うけど」
「……変わるのか?お前でも?」
「もち!日に日にリカへの愛情増してるぜ!」
だから、こんな真似をした。
友達を疑うような、こんな最低なことを。
「……俺と、お前は違う」
頼稀はテラスの手摺りを持って遠くを見つめる。
「何が違うの?」
「前にも言ったが、俺の立夏に対する感情は一般的な家族に対するようなものだ。お前のように恋愛感情は持ち合わせちゃいない。だから…、きっとこの後ろめたい気持ちをお前が理解することは出来ないと思う」
「……それは、リカに対してってこと?」
「償っても償いきれないものを背負っているのは立夏だけじゃない」
……ああ、聞かせられないわけだ。
「お前のこと、言えないな」
誰だって見せたくないよね。弱い自分なんて。
「本当だよ」
未だに頼稀が言う「義務」ってのはよく分からない。
頼稀とアゲハのことも触れられず仕舞いで目的の半分しか達成出来なかった。
でも一つだけはっきりした。
頼稀がリカを守るのは頼稀の意志だけでなく風魔の意志でもあると言うことが。