歪んだ月が愛しくて2

義兄弟の溝




立夏Side





その日は突然訪れた。



「リツ」



放課後の生徒会室に珍しく誰かが訪ねて来た。
安易にドアを開けた先にいたのは、義弟のカナだった。



「な、で…」



突然のことに上手く言葉が紡げない。



「話がある」

「、」



とうとうこの日が来たのか。
これまで目を背けていた現実に真っ向から直面しなければいけない、この日が。



ああ、目の前がチカチカする。

懐かしいカナの声に肩が震えて、ゴクッと息を飲む。



「や…」



足が竦む。



あの日のカナの言葉が、ぐるぐると脳裏を駆け巡る。





『何だよ、それ…。本当の兄弟じゃないって、どう言う意味だよ…』





嫌だ、嫌だ。



それ以上は喋るな。何も言うな。



もう、何も聞きたくないのに…っ。





『俺は一度だってお前を兄弟なんて思ったことはねぇよ…』





次の瞬間、グッと肩を引き寄せられた。



「あれ、弟くんじゃん!おっひさー!」



振り返ると、未空は俺の肩に手を置いて後ろから顔を覗かせていた。



「お前は…」

「あ、そう言えばまだ自己紹介してなかったっけ?俺はリカのクラスメイトの仙堂未空。宜しく!」

「……藤岡叶威」

「じゃあカナちんね!俺のことは未空って呼んで!」

「カ、カナちん!?」

「うん!叶威だからカナちん!」

「変なあだ名付けんな!」

「変じゃないよ。可愛いじゃん」

「どこがだ!?」



何やらカナと親しげに話す未空は「可愛いのにー…」と言って口元を窄める。



………いやいや、そうじゃなくてっ。



「な、何で、未空がカナのこと知ってるの…?」

「この間会ったんだよね、偶々」

「……お前等が勝手に押し掛けて来たんだろうが」

「そっちから話し掛けて来たくせに」

「お前等の声がでけぇんだよ」



どうやら未空は俺の知らないところでカナと接触していたらしい。
恐らくカナが転入して来た日、「敵情視察だ!」と意気込んで頼稀達とS組に乗り込んだ時に顔見知りになったんだろう。
あれ以降、未空も頼稀も他の2人もカナについて何も言って来ないから俺も自分からカナの話題を振らなかったが、まさか本当に接触していたとは。しかもいつの間に仲良くなって……いや、それは未空が馴れ馴れしいだけか。



「それより、何でお前がここにいるんだよ?」



カナの問いに、未空は首を傾げて答えた。



「だって俺も生徒会のメンバーだもん」

「も?」

「リカもだよ」



するとカナは怪訝そうに眉を顰めて俺を見つめた。



「は?」

「………」



カナの視線が痛い。



カナの目が見れない。あの日から。


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