歪んだ月が愛しくて2
「……何とか言えよ」
カナの視線と交わる。
母親似の瞳が不安げに揺れていた。
「言わなくても分かるじゃん。俺がアイツを好きになることなんて有り得ない」
自分で言って置きながら胸の辺りがずくりと痛む。
「俺は、誰も好きにならない」
「………」
そもそもカナが文月さんを気にすることだって可笑しい。
俺ほどじゃないとは言えカナだって文月さんが苦手だったはずなのにいつから文月信者になったのやら。
「じゃあ、何で俺に黙って出て行ったんだよ…」
「だから出て行ったわけじゃないって。俺だって最初は義務教育が終わったら就職するつもりだったよ。でもそれが兄ちゃんにバレて兄ちゃんが文月さんに相談したからここに通うことになったの」
「チッ、やっぱりアイツが元凶かよ」
「……カナは何でここに来たの?前の学校は?」
「辞めた」
「は?や、辞めたって…」
「だから退学した。それでここに来た」
カナの言葉に耳を疑った。
それと同時に「学校ってそんな簡単に辞められるんだ」と疑問が生まれたが、それは一先ず置いといて気になるのはその理由だ。
「何で?何かやらかしたの?」
「するわけねぇだろう、お前じゃあるまいし」
「だったら何で…」
俺が理由を尋ねるとカナは俺から視線を逸らして渋々答えてくれた。
「お前が、勝手にいなくなるから…」
「え?」
一瞬、カナの言葉が理解出来なかった。
「俺の、せい…?」
まさか、俺が家を出たから?
カナに何も言わなかったから?
そんなことでカナが退学までするなんて…。
「別にお前のせいじゃない。前のところを辞めたのは退屈だったからだ」
「退屈って…」
学校なんだから仕方ないじゃん。
そんな俺の心情を知ってか知らずかカナは平然と言葉を続ける。
「それに心配性の兄貴が毎日のようにリツリツって喚くせいでこっちはもう耳にタコなんだよ。だから俺が転入して様子を見てやろうと思っただけ」
「……何か、あった?」
「別に」
「じゃあ何でこのタイミングで…」
「兄貴の心配性が発症した頃タイミング良く文月から連絡が来たんだよ。お前に悪い虫が付いてるってな」
「悪い虫?」
「初めは文月の言ってる意味が分からなかったけど、ここに来て周りの噂とか聞いてるうちに何となく分かった」
「分かったって、何が…」
「悪い虫の正体。それが生徒会の存在だってことがな」
途端、カナの顔付きが変わった。