歪んだ月が愛しくて2



「でもまさかお前が生徒会に入ってるとは思わなかったけどな」

「意外?」

「寧ろ嫌いだろう、そう言うの」



断言するな。

まあ、その通りだけど。



「……文月さんから何か聞いた?」

「悪い虫が付いてるってことしか聞いてない」

「そう…」



覇王を“悪い虫”で例えるなんて文月さんらしい。相当嫌ってるからな、お互いに。
文月さんのことはどうでもいいがカナには会長達のことを誤解して欲しくないんだけどな。



「ここがその根城ってわけか…」



カナは周囲を見渡して「金の無駄遣い」と吐き捨てた。
そんなカナを見て俺の金銭感覚は間違っていなかったことを再認識した。



「リカ、コーヒー豆のストックってどこだっけ?」



未空は給湯室から顔を出して声を上げる。

あ、未空のこと忘れてた…。



「ごめん、補充すんの忘れてた。下から取って来るよ」

「いいよ。折角カナちんが来てるんだし俺が取って来るからリカ達はここで待ってて」

「でも…」

「行って来るね!」



そう言って未空はバタバタと忙しなく生徒会室を飛び出した。



「人の話聞いてないし…」



まあ、未空らしいけど。



「……アイツも、生徒会のメンバーなんだよな?」

「アイツじゃなくて未空。さっき自己紹介してただろう」

「他は?」

「まだ来てないけど他に3人いるよ。まさか会いたいの?」

「好きで会いたいわけじゃない。文月の言ってた悪い虫の意味をこの目で確かめたいだけだ」

「別に悪い虫じゃないと思うけど」



寧ろ親衛隊から見たら俺の方が悪い虫だし。



「は?庇うの?」



嘲笑うような声色。
皮肉めいた台詞に内心カチンとした。



「庇うって何?別に俺は…」



庇うも何もそもそも覇王は悪い虫でも何でもない。
寧ろ俺にとっては太陽のような存在だ。
こんな俺を受け入れて、仲間と言ってくれて、そんな彼等が悪者扱いされるなんて間違っている。
100パーセント善人じゃなくても少なくとも俺にとっては良い人達だった。



「……いや、違うな。本当は生徒会なんてどうでもいい」

「カナ?」

「ただ、お前がいれば…」

「………」



カナの様子が可笑しい。

覇気のない弱々しい声も、その台詞も、カナのものとは思えない。


< 99 / 651 >

この作品をシェア

pagetop