ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 お礼を言うのは……私じゃないか。


「前の彼氏には、作らされている……そんな気持ちで作っていました。義務みたいな、私のする当たり前のこと、みたいに」

 最初からそんなことはきっとなかったはずだ。でもどうしてだろう、もう私の記憶の中で恋人に作る喜びみたいな記憶は残されていない。お腹が空いている人に食事を与える、そんな義務的な流れみたいに料理を提供していた。

「喜んでもらえたらいいな……そんな思いで料理する気持ち忘れていました」

「……」

「安積さんは私にいっぱいいろんな気持ちを教えてくださいます。知らなかったこともそうだけど、忘れていたことも」

「……」

「だからお礼を言うのは私なんですよ? 私ばっかりがもらっています」
 
 伝えきれない思いがある。この過ごす時間の中で私はいくつの気持ちに触れて自分を満たしているのだろう。こんな気持ちを安積さんはひとつでも感じてくれているのだろうか。

 結局触れることが出来ない時間。安積さんは私の知らない時間にいるから。

 触れたい……そう思うのだ。
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