ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 別れを告げて逃げるようにその場を去った。

 それもまた安積さんを傷つけたかな、そう思う気持ちはあるけれど無理だった。

 大人の対応でもっとうまく別れの言葉を告げたかった。なんなら笑って言いたかったのに。

(笑えるわけないっ……)

 溢れ出てくる涙を止められないまま足が徐々に速度を落としそのまま立ち止まってしまう。帰らなければ、そう思っても根を張ったように動けない。寒空の下、泣きじゃくる私は全身を震わせる。寒さ? 気持ちが? もうわからない。いろんな部分の感覚が麻痺していくようでただ涙だけがこぼれていく。

 終わった、終わってしまった。
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