ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 これはやはり夢だろうか? そう思わずにいられないほど信じられない現実が目の前にある。

「……こ、紅茶です」

「ありがとう」

 コトリ、とテーブルにカップを置くと温かな湯気がフワッと揺れて茶葉の香りが舞う。なんとなく時間稼ぎに紅茶を淹れたなど安積さんには悟られていないだろうけれど、単純に気まずい。

(どうしたのかな……なにか話? え? 今さら私に何の話?)

 まさか安積さんが家まで来るなんて予測などできなかったから、想像するもののなかなか答えが導き出せない。

「急に来てごめん。せっかくの休みなのに」

「いえ……別に予定もなく……暇をつぶしていました」

 正直に答えたら笑われた。

「そ、それより安積さんこそ……出発の準備は出来たんですか?! こんなところで油打ってる場合じゃないんじゃ……っ」

 そこまで言ったらインターホンの音に遮られた。

「あ……今度は本当に宅配かな」

 そう言って玄関に向かおうとしたら「こら」と、背中から少し怒った声が飛んできた。
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