ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~
 いろんな意味で恥ずかしいしかない。

「四宮のこと、よく見てきたつもりだったけど……そんな性格だったとは知らなかった」

 そんな言葉をこぼされて思わず食いついた。

「そ、そうですよ?! 安積さんだって私のことなんかなにも知らないじゃないですか! もっといろんなこと知って分かったら年齢なんかどうでもいいってなるかもしれませんっ!」

「それはまぁ、四宮にも言える話だと思うけどな?」

「え?」

「四宮だって、俺のことなんか何も知らないだろ?」

(それは……そうだけど)

 だからじゃないか。だから――。

「だから、知りたいんです。もっと」

 もっとあなたのことが。
 知ってほしいは建前だ。本音は違う。本当は私が知りたい、もっといっぱいあなたのことを。

「もっと……安積さんを知りたい」

「……」

「ちゃんと、諦めます。約束します……だからっ……」

 声が震えた、視界が揺れて泣きそうだ。でも、泣かない。泣いたら困らせる、それだけは分かるから。同情みたいにして頷かせるのだけはしたくないと必死で涙がこぼれ落ちることに耐えた。

「はぁ……」

 そう、大きなため息が頭上に降ってきて体がびくりと跳ねあがった。
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